「iDeCo」と「個人年金保険」は、どちらも老後の年金を貯めるための手段です。
多くの方が加入されており、支払った掛け金や保険料の額に応じて税金の負担を軽減できる仕組みがあります。
しかし、iDeCoと個人年金保険では、節税できる金額に差があります。
そこで今回は、毎月同じ額のiDeCoと個人年金保険に加入した場合の節税効果を比較し、どちらの節税効果が高いのかを検証します。
今回はiDeCoと個人年金保険の掛け金や保険料を支払う時の節税効果について比較しました。実際に給付金や保険金を受け取る時の節税効果は異なります。

目次
iDeCoと個人年金保険で節税できる仕組みの違い
iDeCoで支払った掛け金や個人年金保険で支払った保険料は、所得控除の対象です。
課税の対象となる所得の金額を減らし、所得税や住民税の負担を減らしてくれる効果があります。
ただし、iDeCoと個人年金保険では、控除される金額を算出する方法が異なります。
iDeCoと個人年金保険の控除算出方法
iDeCoと個人年金保険の所得控除の種類と控除額の算出方法は、次の通りです。
iDeCo
掛け金は、「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象です。
年間の掛け金と同額が所得から控除されます。
個人年金保険
支払った保険料は、「生命保険料控除」の対象です。
支払った保険料の額に応じた一定額が控除されます。
さらに、個人年金保険の場合、以下のように所得税を計算する場合と住民税の場合とで控除額が異なる点に注意が必要です。
最大で4万円(年間の保険料が8万円以上)
住民税の控除額:
最大2.8万円(年間の保険料が5.6万円以上)
以上を踏まえたうえで、節税効果を検証していきます。
iDeCoと個人年金保険の節税効果をシミュレーション
今回のシミュレーションに利用するモデルケース(Aさんとする)は以下の通りです。
≪シミュレーションの前提条件≫
職業:会社員(独身)
年収:500万円
給与所得控除:154万円
社会保険料:年間70万円
基礎控除:
所得税 = 38万円
住民税 = 33万円
※他の生命保険の加入はなし
節税効果比較のための計算
以上の条件で、iDeCoもしくは個人年金保険に、年間24万円(毎月2万円)支払った場合の節税効果を比較します。
節税効果を比較するには、iDeCoと個人年金保険それぞれの控除額に、所得税と住民税の税率をかけます。
例えば、所得税の税率が5%で、控除額が20万円の場合、年間で1万円(20万円 × 5%)節税できたことになるのです。
そして、所得税の税率は課税される所得の金額によって変わる仕組みです。
課税される所得金額の計算式
まずは、所得税の課税所得から計算しましょう。
この計算式にAさんの前提を当てはめてみます。
500万円 − 154万円 − 38万円 − 70万円 = 238万円
Aさんの課税所得金額は、238万円です。
国税庁のサイトを参照すると、課税所得が195万円~330万円以下の場合、所得税率は10%です。
そして、住民税の場合の税率は年収に関わらず一律10%です。
iDeCo、個人年金保険の節税効果計算結果

前述の計算式と税率にあてはめて、iDeCo、個人年金保険それぞれの節税効果を割り出すと次の通りです。
iDeCoの節税効果
まず、iDeCoに年間で24万円加入した場合は、課税所得からさらに24万円が控除されるため次のようになります。
所得税の節税効果:24万円 × 10% = 2万4,000円
住民税の節税効果:24万円 × 10% = 2万4,000円
よって、
となりました。
個人年金保険の節税効果
個人年金保険に年間で24万円の保険料を支払っている場合は、最大控除額である所得税4万円、住民税2.8万円が受けられます。
節税効果を計算すると次の通りです。
所得税の節税効果:4万円 × 10% = 4,000円
住民税の節税効果:2.8万円 × 10% = 2,800円
節税効果が高いのはiDeCo
今回のモデルケースにおいて、iDeCoと個人年金で年間で節税できる金額は、iDeCoの方が所得税は2万円、住民税は2万1,200円、合計で4万1,200円も高いことがわかりました。
iDeCoの方が掛け金と同じ額が所得から控除されるため、大きな節税効果を得られます。
ただし、節税効果は年収や家族構成などによって、変動する場合があります。
さらに、住宅ローン控除やふるさと納税を利用して所得税や住民税の負担がかなり軽減されている人は、節税効果が低くなる点に注意しましょう。
また、今回の比較はあくまで節税効果を比較したもので、iDeCoの方が全てにおいて優れているわけではありません。
ご自身の状況や、iDeCoと個人年金保険の特徴を理解したうえで、どちらに加入するか選んでみてください。(執筆者:品木 彰)