家族が思わぬ病気や怪我をした人、市販の薬を頻繁に購入しているという人は、確定申告で医療費控除が使えるか気になりますよね。
2019年現在、医療費に関する確定申告では
・ セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
の2つの控除制度が選べるようになっています。
どちらも制度内容がややこしく分かりにくいのが難点ですが、医療費控除またはセルフメディケーション税制が利用できると所得税や住民税が減らせるので、制度を理解して申告に備える価値はあります。
詳しく見ていきましょう。
目次
1. 医療費控除とは?
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医療費控除は、年間の医療費が10万円(年間の総所得が200万円以下の人は総所得金額の5%)を超えるときに所得控除を受けることができる制度です。
年間10万円以上の医療費というと「そんなに払っていない」と思いがちですが、医療費控除では家族全員の医療費等を合算して計算できます。
たとえば介護保険サービスを利用している家族や、定期的な通院や大きな手術を受けた家族がいれば、年間の合計額が10万円を超える場合も出てきます。
医療費控除の対象となる主なもの
・ 病院の窓口で支払う医療費
・ 通院時の公共交通機関の交通費
・ 通常の入院代に含まれる食事代
・ 医師の処方箋が必要な処方薬代
・ 病気の治療や療養に必要な市販薬代
・ 介護保険制度を利用した施設・居宅サービスの自己負担額
・ 6か月以上寝たきりで医師が必要と認めた場合のおむつ代 など
医療費控除の計算方法
医療費控除では「年間の医療費が15万円なら、15万円全額が控除される」と勘違いする人もいます。
年間の医療費が10万円を超えたときに控除額が発生するので、この場合の医療費控除額は5万円です。
計算方法は以下のようになります。
2. セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)とは?
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、「自分で薬を飲んで病気を治した費用を所得から控除する」という制度です。
スイッチOTC医薬品の年間の購入費用のうち、1万2,000円を超える部分について所得控除を受けられます(上限8万8,000円)。
購入費用は家族で合算して計算できます。
セルフメディケーション税制の対象
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セルフメディケーション税制を利用する人は、病院の医療費や処方薬代は控除の対象になりません。
また、介護保険サービスの自己負担額やおむつ代なども控除対象外になります。
対象となるのはスイッチOTC医薬品のみなので、たとえば似たような風邪薬でもセルフメディケーション税制の対象になるものとならないものがあり、注意が必要です。
セルフメディケーション税制にの必須条件
セルフメディケーション税制を利用するには
であることが条件です。
そのため、勤め先の健康診断や、自治体のがん検診、インフルエンザ等の予防接種を受けた証明書が必要になります。
医療費控除とセルフメディケーション税制、得するポイント
【医療費控除が使える人】
家族の年間の医療費・薬代等が10万円を超えた人
【セルフメディケーション税制が使える人】
家族の年間のスイッチOTC医薬品代が1万2,000円を超えた人
上記の両方に当てはまる人は、両方の計算をして控除額が大きい方を選びましょう。
例:年間医療費・薬代等が15万円、スイッチOTC医薬品代が3万円の人
医療費・薬代等15万円-10万円=医療費控除額5万円
スイッチOTC医薬品代3万円-1万2,000円=セルフメディケーション税制の控除額1万8,000円
医療費控除額5万円の金額の方が大きいので、医療費控除を選択します。
医療費控除とセルフメディケーション税制、両方準備しておく
医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか片方しか選択できません。
1年間でどれくらい医療費がかかるかは予測不可能です。
そのため、どちらの制度も選べるように準備をしておくと良いでしょう。
・ 医療機関・市販薬の領収証は必ず保管する
・ 健康診断か予防接種を受けて証明書を保管する
・ 市販薬はできるだけスイッチOTC医薬品を選んで買う
また、医療費控除とセルフメディケーション税制は1年ごとに選択可能です。
今年は医療費控除、次の年はセルフメディケーション税制というふうに、その年の医療費に合わせて使い分けても問題ありません。(執筆者:2級FP技能士 久慈 桃子)