相続財産といってもプラスの遺産だけとは限らず、借金などの負の遺産も存在します。
トータルでマイナスになるようであれば、相続放棄をするのも一つの方法ですが、放棄後の財産はどうなるのでしょうか。

目次
相続放棄とは
相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産につき、法定相続人が一切相続しないことを家庭裁判所に申述することです。
相続放棄をした者は、最初から相続人ではなかったとみなされます(民法第938、939条)。
ちなみに、被相続人の財産がトータルでプラスかマイナスか分からない場合、相続で得たプラスの財産を限度として、被相続人の債務などに充てるという「限定承認」という方法を選択することもできます(同第922条)。
なお、相続放棄は各相続人が単独でできますが、限定承認は法定相続人が全員でしなければなりません。
放棄した財産は次順位の法定相続人が相続する
被相続人に配偶者と子がいれば、この二者が第一順位の法定相続人です。
配偶者が相続放棄をすれば、子が全財産を相続するので当然に債務も全額負うことになります。
一方、子が相続放棄をした場合、子は最初から相続人でないとされるので、財産は配偶者が3分の2、被相続人の父母などの直系尊属が3分の1の割合で相続します。
被相続人の直系尊属が全員亡くなっているか相続放棄をした場合には、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となります。
相続割合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。
配偶者と子の双方が相続放棄をすれば、直径尊属、兄弟姉妹の順で全財産を相続します。
なお、被相続人の子に子供がいても、そもそも子は「相続人でない」のですから、その子供に相続権は発生せず、いわゆる代襲相続は起こりません。
相続人全員が放棄した場合は?

法定相続人全員が放棄した財産は、「相続人なし」となり、家庭裁判所が相続財産管理人を選任して管理します。
ただし、相続財産管理人は被相続人の債権者などが申立てなければ選任されません。
債務しかなく、プラスの財産が全くないようであれば、債権者はまず申立てをしないので、この時点で相続に関する手続きは全て終了となります。
しかし、もし被相続人が僅かでも財産(あまり価値のない不動産など)を持っていれば、相続人は相続放棄をしたとしても、その管理責任まで免れられるものではありません。注意しましょう。
相続放棄は単独でできるとはいえ、自分さえしてしまえば終わりではありません。
次順位の相続人に、ある日突然故人の借金の支払い請求が届いて驚かせるなどの迷惑をかけないよう、必ず放棄した旨の通知をするようにしましょう。(執筆者:橋本 玲子)