最近は会社員などとして働きながら副業をしている方が増えています。
一念発起して会社を辞めて、専業のフリーランスになろうと考えている方は失業保険を当てになさっていることでしょう。
ネットでは「もらえる説」と「もらえない説」が入り乱れています。
フリーランスになるために会社を辞めると失業保険はもらえるのか解説します。

目次
フリーランスも失業保険をもらうことは「一応」可能
会社を辞めたり辞めさせられたりした後にもらえる失業保険は、正式名称を雇用保険の「求職者給付」と言います。
就職する意思と能力があって、積極的に仕事を探しているのに現在職業に就いていない人がもらえる給付金です。
つまり、失業保険というのは、失業状態にある求職者を支援するための制度です。
会社を辞めてフリーランスとして働く人は失業状態でもありませんし、求職者でもありません。
そのため、
というのが論理的な結論になります。
ただ、全国のハローワークはそこまで厳格に失業保険制度を運用しているわけではありません。
実務では、多少の仕事をしている人であっても、就労しているというほどではなくて、就職活動に支障をきたさない程度の働き方であれば、できるだけ失業保険を受給できるように配慮してくれているようです。
したがって、会社を辞めてフリーランスになる人でも失業保険を一切もらえないわけではなく、もらうことは一応可能です。
ただし、会社を辞めてからのフリーランスとしての働きぶりに応じて受給が制限されることがあります。
ガッツリ働く人であれば、受給するのはほとんど無理でしょう。
どの程度働けばどの程度受給が制限されるのかと言いますと、失業保険の手続きの流れの中で変わってくるので、時系列に沿って解説します。
なお、以下の解説では分かりやすいように目安を明確に提示しますが、その目安が全国のどこのハローワークでも通用するとは限りません。
失業保険の運用については地域ごと、さらには同一のハローワーク内でも担当者ごとに運用が若干異なっているのが現実です。
これは、気まぐれに制度を運用しているわけではなく、失業保険を申請した人にはできるだけ適法に受給してもらおうという職員さんたちの努力の結果であると考えられます。
いずれにせよ、全国一律の運用ではないという現実がありますので、実際に申請する際は管轄のハローワークに「自分の場合はどうなのか」ということを確認する必要があります。
待機期間中

まず、離職して失業保険の受給を申請して受給資格決定が出ると、その日から受給期間が始まるまでの7日間は待機期間となります。
この期間は完全失業状態で過ごさないと失業保険を受給することはできなくなります。
7日間一切働いてはいけないわけではありませんが、少しでも働いた日は失業状態ではありませんから、その日数分だけ受給期間の開始が先送りになってしまいます。
もっとも、1秒でも働いたらアウトかと言えば、そこまで厳格ではない可能性もあります。
1日4時間未満の活動であればセーフになる余地もあるかもしれませんが、建前としては1秒でも働いたらアウトなので、そのつもりでいるべきでしょう。
例としては、アフィリエイトをしている人で、趣味のブログの更新を毎日4時間未満行っていた場合で問題なく受給できたというケースがあるようです。
このケースでは「趣味の」ブログの更新だったからセーフになっただけで、これが収益目的のブログの更新だったらアウトになった可能性が高いと考えられます。
待機期間は7日間連続で完全失業状態でなくても構いません。
途中で1日働いた日があれば待機期間が8日間に延びるだけです。
働かない日が通算で7日になったら待機期間は満了します。
給付制限中
会社都合で退職した方なら待機期間が満了すればすぐに受給期間が始まりますが、自己都合で退職した方はその後に3か月間の給付制限期間があります。
3か月もの間働かないで過ごすと普通は生活に困るので、この期間中に働くことは禁止されていません。
ただし、就職したのと同視できるほどに働いてしまうと失業者ではなくなり、受給できなくなってしまいます。
どの程度働くと就職したのと同視されるか
1週間の所定労働時間が20時間以上」および「31日以上の雇用が見込まれる場合」が目安です。
この2点は雇用保険の加入条件に該当するからです。
給付制限中にフリーランスとしての仕事をするなら、週20時間未満に抑えておかないと受給できなくなります。
かなり厳しいですが、仕方ありません。
受給中
待機期間が満了し、給付制限がある方は3か月間の給付制限期間も終わると、いよいよ受給期間に進みます。
受給期間中も雇用保険の加入条件を満たすほどに働くと就職したものとみなされるので、働くなら週20時間未満に抑えておかないと受給できなくなります。
受給期間中はさらに、「1日4時間」という制限が加わります。
1日4時間以上働くとその日は就労扱いになってしまい、給付金は支給されません。
ただ、働いたからといって給付日数が削られるわけではなく、働いた日数分だけ支給が先送りになります。
とはいえ、受給期間は離職から1年なので、先送りが続いて1年を超えてしまうと結局支給されなくなってしまいます。
1日4時間未満働いた場合
労働時間と収入額を申告する必要があり、その内容次第で給付金が支給されなかったり減額されたりすることがあります。
具体的には、収入額を4時間未満働いた日数で割って日額を求め、それを以下の計算式に当てはめて計算します。
(2) 前職での賃金日額 × 0.8
(1)≦(2) … 全額支給
(1)>(2) … 減額支給
収入日額>基本日額手当 … 不支給
前職での賃金日額8,000円、基本手当日額5,395円の人の場合で計算すると、4時間未満の収入日額と給付金の支給状況の関係は以下の通りになります。
2,293円~6,400円 … 減額支給
6,401円~ … 不支給
収入日額が6,400円以内なら1日何時間働いても受給できるわけではなく、1日4時間未満でなければならない点にはくれぐれも注意しましょう。
虚偽申告は絶対にいけません

受給期間中の労働時間や収入は「失業認定申告書」に自分で記入してハローワークに提出することにより申告します。
自己申告なのだから適当に書けばバレないのでは…と思うかもしれませんが、それは絶対にいけません。
収入
振り込みであれば確実にバレます。
手渡しであっても、通常は支払者が申告するのでバレます。
労働時間
特に業務委託でやる仕事などの場合は就業時間が必ずしも明確でないため、ある程度は概算で申告するのもやむを得ません。
ただ、おのずから「相場」というものがありますから、あからさまに労働時間を少なく申告すると怪しまれてしまいます。
虚偽の申告などの不正な手口で受給すると厳しい罰則が待っています。
支給停止になるのはもちろんのこと、受給した金額の全額返金に加えてその2倍の金額の納付を命じられることもあります(合わせて3倍返し)。
悪質な場合は詐欺罪などで刑事告発される場合もあります。
このような大きなリスクを念頭に置いて、申告は必ず正確に行うようにしましょう。
やる気があるなら「再就職手当」を狙うのが正解?
フリーランスが失業保険をもらうのは不可能ではないものの、かなり厳しい制約があります。
なにしろ、7日間の待機期間はほぼ働けませんし、その後も1日4時間以上、週20時間以上働くといつまでたっても受給できません。
会社を辞めて、それまでの副業を本業にしてバリバリ稼ごうと思っていた人にとっては、失業保険をもらうために仕事をセーブするのは本末転倒でしょう。
したがって、やる気のあるフリーランスは失業保険を当てにすべきではないということになります。
無理に失業保険をもらわなくても、再就職手当ならもらえる可能性があります。
再就職手当とは、失業保険の受給期間中に再就職した場合、一定の要件を満たせばまとまった金額を受給できるものです。
自営業を開始した場合にも適用されます。
失業保険の給付金よりは金額が下がりますが、再就職手当ならいくら働いていてももらえるのですから、ありがたい制度です。
再就職手当を受けるためにもいろいろな要件がありますが、フリーランスにとって最も重要なのは、事業の開始日です。
前職から離職する前から副業として収入を得ている方も多いと思いますが、そういった場合でも受給は可能です。
という形を取れば良いのです。
待機期間が満了する前に開業届を出してしまうと受給できなくなるのでご注意ください。
制度はややこしいですがもらえるものはもらっておきたい
失業保険の制度は、実際のところかなりややこしいです。
地域によって、担当者によって運用が違うところもあるのですからなおさらです。
起業してバリバリ働くために会社を辞めたフリーランスにとって、余計なことで頭を悩ませるのは本末転倒かもしれません。
でも、もらえるものはもらっておきたいところでもあります。
失業保険は誰もが知っているでしょうが、再就職手当については知らない方も多かったのではないでしょうか。
失業保険をできる限りもらうのか、再就職手当を狙うのか、それとも何ももらわずバリバリ働くのか、人それぞれ最適な選択は異なりますが、後悔のない選択をして、新たなスタートを切りましょう。(執筆者:川端 克成)