昨今、自転車と歩行者との交通事故での死亡件数の多さが問題になっています。
電動アシスト自転車など本体の重量があり、かつ速度が出る車両の増加や、ながらスマホなど注意力散漫な運転なども要因だと思われます。
未成年が自転車事故を引き起こしてしまった時の賠償責任が、自動車と違い強制保険の制度がないため問題となります。

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自転車も「車両」
自転車も道路交通法上は車両(軽車両)として扱われ、運転には法律上のさまざまな規制が伴います。
しかし早ければ4~5歳時から運転を始めることもある自転車は、身近な移動手段として捉えられ、免許も不要ということもあり、マナーやルールを理解しないまま運転する人が多くなってしまうのでしょう。
刑事責任と民事責任
自転車事故を起こして相手を死傷させた場合、運転者側に過失があれば、(重)過失致死傷罪(刑法第210条・211条後段)に問われ、場合によっては懲役刑を科されることもあります。
また、民事では不法行為による損害賠償責任を負います(民法第709条)。
自転車だから責任が軽くなるということはなく、被害者の状態によっては多額の賠償金の支払いを命じられることもしばしばあります。
自転車の重大事故が社会問題となってきてからは、たいていの損保会社が自転車保険を扱うようになりました。
また、自動車保険や火災保険で自転車事故に対応しているものもあり、いまだ保険加入が義務化されていないとはいえ賠償において一定の効果が出てきているといえます。
親の義務とは

未成年の子供が自転車事故を起こした時の賠償責任では、自転車での死亡事故で9,500万円の賠償を親に命じた判決がありました。
この時の子供は小学5年生でしたが、この11~12歳頃が子供の事故の責任が親にあるとされるケースのポーターラインとされています。
法律的には未成年者に自分の行為に関する責任が理解できていない場合の監督義務者責任が適用されることになります(民法第714条)。
一方、13~14歳以上の子が事故を起こした場合だと、裁判では親が
と主張することが多いです。
加害者が未成年であっても責任能力が問えると判断された場合、未成年本人に不法行為による損害賠償責任が生じます。
そのような年頃の子供に「賠償能力はない」となったら、被害者は泣き寝入りするしかないのでしょうか。
実は、この場合でも、親の監督不行届きが原因で事故が起きたとして、親に直接不法行為による賠償責任を問える可能性があります。
日頃「運転に注意してね」と言っていた程度では監督義務が果たされていないとする裁判例があるなど、基準が厳しめとなることが多いようです。
親が賠償責任を免れることは、そう簡単にはいかないでしょう。
事故が起きてからでは遅い
子供が自転車に乗るようになったら自転車保険に入ることは大切です。
と子供にも理解をさせて、家族で慎重な運転を心がけることが1番大切だといえるでしょう。(執筆者:橋本 玲子)