個人型確定拠出年金(iDeCo)は、度々の規制緩和で加入対象範囲が拡大し、注目を浴びています。
老後2,000万円問題をきっかけに始めた方も多いのではないでしょうか。
老後2,000万円問題を受けて加入手続きをした場合、そろそろ手続きが完了して口座が開設できた頃かもしれません。
そこで今回はiDeCoの商品選択について解説します。
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目次
最初の配分指定はリスク許容度に応じて決める
iDeCoで配分指定を行う時に重要な考え方はリスクとリターンのバランスです。
一般的に大きなリターンを得られる商品はその分大きく損をするリスクも高く、リスクが低い商品は狙えるリターンも小さくなっています。
iDeCoは掛け金が全額所得控除になるだけでもかなりの節税効果があるので、リスクを取りたくない場合は元本保証型の商品にする作戦も考えられます。
しかし投資期間が長いほど、つまりiDeCo加入時の年齢が若いほど長期投資によるリスク低減が期待でき、さらに複利効果で資産を大きく増やす事も可能です。
そのため老後資金準備のためにはある程度リスクを許容して、リターンの狙える株式投資信託や不動産投資信託(REIT)などの商品を選ぶ方が良いと考えられます。
もちろんリスクヘッジのために債券などを組み入れる事も必須です。
商品配分に正解と呼べるものはなく個人の経済状況や考え方によるので、
「最終的に老後資産としていくらまで増やす必要があるのか」
の2つの観点で配分を決めることをお勧めします。
組み入れ割合によるリスクとリターンの期待値は各種アプリやウェブサイトのシミュレーターで計算することができますので、ぜひ利用してみてください。
後からも手軽に商品入替えができるのがiDeCoの強み
iDeCoのような長期投資の場合、株式や債券の割合をある程度計画立てて決めていても、次第に割合がずれていってしまうことがあります。
そのため1年や数年毎に商品の比率を入れ替えてバランスを整える「リバランス」を行う必要があります。
リバランスは実際にやってみるとなかなか面倒で、今後購入する商品の内容を変える(配分変更)だけであれば楽なのですが、これまでに買った商品を別のものに換える(スイッチング)ときには一度売却することになります。
せっかく利益が出ていても売却時に税金が引かれてしまい、さらに金融機関や保有商品によっては手数料がかかってしまうのも痛い所です。
しかしスイッチングではリバランス以外にもそれまでの運用で発生した利益を確定させる効果もあるため、老後資金を確実に増やすためには重要なポイントです。
例えば利益が多く出た時点でその商品を売却して、あとは元本確保型の商品に換えて置いておけば、受取時点まで利益を守り続けることができます。
この観点からiDeCoの良い所は、スイッチングを行う際に売却により確定させた利益に対して税金がかからず、手数料がかからない金融機関がほとんどという事です。
ただし、商品によっては信託財産留保額(いわゆる売却時手数料)が設定されている場合があり、これに限っては売却金額から手数料が差し引かれるので注意が必要です。
バランス型だと管理が楽
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シミュレーターで計算したり、スイッチングしたりといった作業が面倒な場合は100%バランス型ファンドにするというのも手です。
バランス型だと初めから国内外の株式や債券、REITなどが決まった割合で組み入れられており、ある程度のリスクヘッジが行われています。
株式や債券など個別の変動を見るのを楽しみたいという場合にはオススメできませんが、とにかく放ったらかしにしたい人にはもってこいです。
また、加入から一定期間以上運用指図を行わなかった場合に自動的に適用される「指定運用方法」にもバランス型のファンドを設定している金融機関が多くなっています。
指定運用方法のバランス型商品の場合は特にコストが低く、かつリスクの低い債券等を多く含んだ安定的な運用内容になっていることがほとんどなので、面倒な場合は配分指定せずに放置しておき、自動的に指定運用方法に移行させるのも良いかもしれません。
老後資金が減らないようにリスクヘッジしましょう
老後不安が取り沙汰されるようになり、ニュースや知人に言われるがままにiDeCoを始めてみたというケースも多いかもしれません。
しかしiDeCoはあくまで自分で運用していくので、計算的に配分指定をしないとむしろ老後資金が減ってしまうことすらあり得るのです。
そうならないためにはシミュレーターなどで試算しておくか、バランス型投資信託などでリスクヘッジを図ることが大切です。(執筆者:島村 妃奈)