そろそろ2019年も終盤に差し掛かり、年末調整の時期が近づいてきました。
年末調整は扶養者がいない場合や保険料控除を受けていない人はあまり馴染みがないかもしれませんが、払いすぎた税金が返ってくる重要な手続きです。
特に今年は老後2,000万円問題もあってiDeCoの加入者が急増したため、今年初めて年末調整をするという方も多いかもしれません。
今回は初めて年末調整をするという方のために、控除できる項目と必要な書類についてまとめます。
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目次
年末調整の対象者は?
年末調整とは事業所に勤める会社員や公務員がその年の給料から源泉徴収された所得税を清算するための制度です。
毎月の給与から天引きされている所得税のうち、払いすぎている部分を還付してもらう、あるいは足りない分を納めるための手続きです。
本来所得税の計算には、個人の状況に応じて税金を軽減するための所得控除という制度が考慮されます。
しかし毎月の給料から源泉徴収されている所得税では、その年の各人の家庭状況を反映させた額ではなく、基準額と昨年までの家庭状況が反映されて計算されているのです。
そこで年末に自分が受けるべき控除を申告して、その年の実際の所得税を再計算する事になります。
多くの場合は保険料控除やiDeCoの掛金、住宅ローン控除などによりお金が返ってくることになるので、思い当たるものがある場合は忘れずに行う必要があります。
確定申告が必要な人
・ 年収が2,000万円以上の人
・ 2箇所以上から給与を受けている人
・ 副業などによる別収入が20万円以上ある人
上記に限っては年末調整が利用できず、個人で確定申告を行う必要があります。
年末調整で申告できるのは12種類の所得控除
所得控除には基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、雑損控除、寄付金控除、住宅借入金等特別控除の15種類があります。
このうち医療費控除、雑損控除、寄付金控除、住宅ローン1年目の住宅借入金等特別控除については年末調整の対象とならず、個人での確定申告が必要となります。
それ以外の項目については全て年末調整で申告し、会社で税額計算・調整をしてもらう事ができます。
このうち多くの人に関わる扶養関連の控除と保険関連の控除、住宅ローン控除、そして今年から増えるとみられるiDeCoなどの小規模企業共済等掛金控除について個別に解説します。
扶養関連控除
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妻や子など扶養している家族がいるケースでは扶養者の申告が必要となります。
記入する書類は2つあり、1つ目は「〇〇年度分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で、この書類は妻や子が居ない場合でも全員が提出する事が義務づけられています。
扶養している家族がいる場合は配偶者の情報や扶養親族の情報を記入していきます。
扶養親族については16歳以上か未満かで記入する箇所が変わりますので、注意が必要です。
この書類の記入で必要な情報は家族それぞれの名前、住所、生年月日、マイナンバー、所得の金額です。
アルバイトやパート、年金など何かしらの収入がある場合は全て記入することになりますので、収入額を確認しておく必要があります。
また、マイナンバーカードや通知カードをどこにしまったか分からないという事もありえますので、今のうちに探して準備しておくと安心です。
もう1つの書類の「〇〇年度分 給与所得者の配偶者控除等申告書」は実際に配偶者がいる方が記入するもので、必要な情報は本人と配偶者それぞれの氏名・住所・マイナンバー・所得といった項目です。
保険関連控除
次に保険料として払い込んでいる額を控除するための書類は、「〇〇年度分 給与所得者の保険料控除申告書」です。
ここでは生命保険料、地震保険料、社会保険料の控除を申告する事ができます。
必要な書類は保険会社からこの時期に送付されてくる「〇〇保険料控除証明書」で、基本的に証明書に記載の内容通りに転記すれば問題ありません。
妻などの扶養家族が保険の契約者となっている場合にもこの書類に記載および証明書の添付をしますので、家族全員分の証明書を大事にとっておく必要があります。
旧制度・新制度の区分によって扱いが変わりますが、区分に関しても証明書に記載の通りに対応すれば問題ありません。
途中計算式を使う必要がありますが、不安な場合は生命保険各社がネット上に公開している「生命保険料控除申告サポートツール」を使うと安心です。
参考元:ソニー生命、第一生命
地震保険に関しても、損害保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」の通りに記載および提出します。
社会保険料控除は勤務先以外で自分や扶養者の健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料などを支払っている人が申請できます。
準備する書類は「社会保険料控除証明書」や保険料の領収証書、保険料納付証明書などです。
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住宅ローン控除(2年目以降のみ)
住宅ローンの控除にあたる住宅借入金等特別控除制度は、初年度は当人が確定申告を行うこととされていますが、2年目から年末調整で申告する事が可能です。
必要な書類は「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の2つで、前者は税務署から、後者は金融機関からそれぞれ10月頃に送付されてきます。
10月以降に借り換えや繰り上げ返済をした場合には年末残高やローンの内容が変更されますので、変更後の書類を再発行して会社に提出するか、自身で確定申告を行うことになります。
小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)
小規模企業共済等掛金控除では共済や企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)で支払った掛金分の控除を受ける事ができます。
今年話題となったiDeCoのメリットの1つである「掛金が全額所得控除」を受けるためには必ず申請が必要です。
他の多くの控除のように所得や内容に応じた控除限度額が設定されていないため、大きな金額の控除を受ける事ができます。
記入する書類は保険関連で出てきた「〇〇年度分 給与所得者の保険料控除申告書」で、払込機関から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」の情報を元に記載します。
申請の際には申告書とともに証明書の提出も必要となりますので、記載後に捨ててしまわない様に注意が必要です。
申告漏れや手続きを忘れてしまった場合
一部の申告漏れや書類提出後に扶養家族や住宅ローンの内容などに変更があった場合には、新規の書類と証明書を再提出する事が可能です。
ただし勤務先によって異なる期限が設けられており、間に合わなかった場合には自身で確定申告を行うことになります。
証明書が見つからなくて再発行している間に期限が過ぎてしまった、などという事はよくあるので、早めに必要書類を準備しておくと安心です。
年末調整をしていても確定申告が必要なケースもあります
年末調整で申告できない所得控除に医療費控除、雑損控除、寄付金控除などがあります。
特に医療費控除(10万円以上)や寄付金控除(ふるさと納税など)は該当する方が多いかもしれません。
この場合は年末調整に加えて確定申告を自分で行う必要があります。
ふるさと納税は確定申告が不要となる「ワンストップ特例」を利用していれば申告する必要はありません。
「ワンストップ特例」利用後に引越をした場合には、「申告特例申請事項の変更届」により住所変更の旨を寄付先の自治体に申告することになります。
自治体への住所変更の申告期限は1月10日(必着)です。
また、投資の損益通算をしたい場合や、株式などの配当金に関して源泉徴収ではなく総合課税で配当控除を受けたい場合にも確定申告が必要です。
事前の準備で負担が軽くなる
年末調整の内容や必要書類についてざっくりとまとめましたが、これだけでも書類の名前もさまざまで面倒に感じるかもしれません。
しかし基本的には所定の機関から送られてくる証明書の内容を転記するだけですので、実際にやってみるとそこまで負担は大きくありません。
期限に間に合うよう、送付されてきた証明書類はケースにまとめておくなど、事前の準備がお勧めです。
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また、申告により戻ってくるお金は年末調整シミュレーションで事前に計算できますので、ぜひ確認してみてください。(執筆者:島村 妃奈)