個人でお金を稼ぐと「個人事業税」がかかる場合があります。
起業や副業を考えていて、所得税や消費税、住民税については知っていても、個人事業税のことはよく知らない方が多いようです。
しています。
この記事では、個人事業税とはどういう税金なのか、いくら支払わなければならないのか、支払わずに済む方法はあるのかについて解説していきます。
目次
個人事業税とは?
個人事業税とは、個人が事業を営むことに対して、所得に応じて課される税金のことです。
所得税と消費税は国(税務署)に納めるものですが、個人事業税は地方(都道府県税事務所)に納めるものであるという違いがあります。
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そのため、「税金 = 税務署に納めるもの」と理解している方にとっては意識しにくい、エアポケットのような税金だともいえます。
また、所得税と消費税は確定申告をして自分で計算した納税額を納めますが、個人事業税は確定申告の時期とはかけ離れた時期に突然納税通知書が送られてきます。
個人事業税は8月と11月に納付することになっていて、前年分の確定申告の内容に基づいて都道府県税事務所から納税通知書が送られてきます。
このようなシステムになっているので、意識していなかった税金を突然支払えと言われて驚いてしまう方が多いのです。
個人事業税として納める金額
個人事業税の税率は3%~5%で、大半の業種は5%です。
個人事業税額を計算するときには「事業主控除」を差し引きます。
控除額は290万円です。
つまり、所得が290万円以下であれば、個人事業税はかかりません。
個人事業税でいう「課税所得」の求め方
ただし、ここでいう「所得」は所得税の確定申告をするときの「課税所得」とは少し違っていて、次の計算式で求めます。
「所得税の専従者控除」を足して「個人事業税の専従者控除」を引くというのがややこしいですが、白色申告の場合の専従者控除の額が所得税の場合と個人事業税の場合で異なるため、このような計算式となっています。
また、青色申告特別控除は個人事業税には適用されないので、所得に加えることになっています。
各種控除には、上記の「事業主控除」も含まれます。
このようにして求めた課税所得に税率をかけたのが個人事業税の納税額となります。
税率が5%で、課税所得が300万円なら、個人事業税の納税額は15万円となります。
これだけの納税を突然求められたら、面食らってしまうのも無理はないでしょう。
なお、個人事業税が課される業種と、業種ごとの税率の一覧表を東京都主税局のホームページから引用しておきます。
量が多いですが、この表はあとで「個人事業税を支払わなくて済む方法」を解説するときにも重要になりますので、ザッと目を通しておいてください。
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個人事業税を支払わずに済む方法はあるのか?
上に掲げた業種のどれかを営んでいる場合は、課税所得が290万円を超えると個人事業税を支払わなければなりません。
と思っている方もいるようですが、残念ながら間違いです。
開業届を出していなくても、所得が38万円(サラリーマンの場合は20万円)を超えると確定申告をしなくてはなりません。
確定申告書の職業欄には業種を書く必要があります。
そして、税務署に提出した確定申告書は都道府県税事務所にも回っています。
都道府県税事務所が確定申告書を見て、要件に該当していると判断すれば、開業届を出しているかどうかにかかわらず個人事業税の納税通知書は届きます。
グレーゾーンの業種なら、開業届の書き方に注意
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という問いに対する答えですが、あります。
その方法とは、開業届や確定申告書の職業欄に、上に掲げた一覧表にない業種を書くことです。
東京都主税局のホームページには、ほとんどの方は一覧表に挙げた業種のどれかに該当すると書いてありますが、そんなことはありません。
文筆業(ライターを含む)、翻訳業、漫画家、画家、音楽家、スポーツ選手、芸能人などは一覧表に挙がっていません。
したがって、個人事業税は非課税となります。
他にも、一覧表に挙がっていない新しい業種はいろいろあります。
ただし、これらの非課税業種のなかにはグレーゾーンの業種があります。
ライターや翻訳家、漫画家、画家などはWebで仕事を引き受けて納品するという形で営んでいる方も多いでしょう。
だからといって、開業届や確定申告書に「請負業」と書いてしまうと課税されてしまいます。
業種を書くときには一覧表のなかからどれかを選ばなければならないと思っている方もいるようですが、一覧表にない業種を営んでいるのなら、そのまま書けばいいのです。
「文筆業」、「翻訳業」、「漫画家」、「画家」と、実際の業種を堂々と書けば非課税になります。
納税通知の月は、心の準備をしておこう
個人事業税の納税通知は、8月と11月という、税金をあまり意識しない時期にやってくるので、毎年納めている方にとっても不意うち感があるものです。
課税対象の業種を営むフリーランスの方は、いざ納税通知を受けて慌てないように算段しておきましょう。
グレーゾーンの業種の方は、とりあえずは非課税業種を名乗っておきましょう。
それでも都道府県税事務所の担当者の解釈次第で課税される可能性はあるのですが、ひるむ必要はありません。
ライターが「文筆業」を名乗り、絵を描く人が「画家」を名乗るのは嘘でも何でもないのですから。(執筆者:川端 克成)