国民投票から3年以上の準備期間があったにもかかわらず、イギリスはいまだにどのようにEUから離脱するか決まっていません。
このような政治的な不確かさはイギリス経済や世界経済に緩やかな悪影響を与え続けていますが、これはリーマン級の経済危機を引き起こすのでしょうか。
ここでは、今後ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)がどのように経済へ影響を与えるのか見ていきます。

目次
ブレグジットの世界経済への影響は限定的
リーマンショックの時は、予想されていないかったところから経済危機が起こりました。
しかし、ブレグジットの場合は、離脱決定後から3年以上の長い準備期間があります。
その間、企業は少しずつ離脱後に向けて準備を進めている上に、ブレグジット後どのようになるのかさまざまな予測が行われています。
このことから、ブレグジットがリーマン級の経済危機を引き起こす可能性はかなり低いでしょう。
実際に、ロンドンにある大手銀行などの金融機関はその機能の一部をアイルランドやフランクフルト、アムステルダムへ移行させています。
また、ホンダはイギリスにある工場を閉鎖することを決定しました。
従って、世界経済への影響は限定的でしょう。
今のところ、ポンドは安くなり、ヨーロッパの株式市場が影響を受けていますが、少なくとも株についてはどちらかというと米中貿易戦争の影響の方が大きい印象です。
世界第2位のロンドン金融センターの地位は盤石
2016年のブレグジット決定直後、ロンドンの金融センターの多くの重要な機能(本社など)が大陸側へ移るのではないかと推測されていました。
候補地としてはアイルランド、フランクフルト、パリやアムステルダムなどが考えられましたが、今のところ実際にはそのようなことは起こっていません。
それらの候補地では、国際言語である英語でビジネスをするのが難しい上に、ロンドンより厳しい法規制があります。
そのため、それらの都市がロンドンの替わりとなる金融センターになるとは考えにくいでしょう。
従って、イギリスがEUから離脱をしてもロンドンは世界第2位の金融センターとしての地位を保てるのではないでしょうか。

一番心配するべきはイギリス国内経済と社会
ロンドンは金融センターだけでなく、AI分野でも世界的に有名です。
ロンドンでは多数のAI人材を輩出されているだけでなく、多数のAIベンチャーが立ち上がっています。
従って、ブレグジット後でもロンドンはどうにかなるでしょう。
ところが、実はイギリスは地方に行けば貧しいところが多く、イギリス国内の経済格差はかなりあります。
例えば、ビーチで有名なコーンウォールは大変貧しくEUから補助金を受けています。
ブレグジット後は、補助金を受けられなくなるだけでなく、関税などにより経済がさまざまな悪影響を受けるので、地方経済は打撃を受け、国内の格差はさらに拡大されるでしょう。
一方で、イギリスはブレグジットを巡って離脱派と残留派に大きく分断されてしまいした。
この社会あるいは政治の分断はブレグジットしても残ります。
このような政治的不安定性は、長期的に経済へ影響を与える可能性が高いので、引き続き注目していくべきでしょう。(執筆者:小田 茂和)