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「合意なし離脱」の確率は下がったがリスクはまだ残る
英国を除くEU27か国は、10月28日に英国のEU離脱期限を3か月延期し2020年1月末までとすることを決めました。
その結果、英国は3か月の猶予期間を手にしたことになり、その間に総選挙を行い、EUとの離脱協定案の議会承認を得ることで円滑なEUからの離脱(合意あり離脱)を目指すことになったのです。
これにより、英国が合意なしでEUを離脱するリスクは低くなったと考えられます。
もっとも、現在の与党保守党は英議会下院で過半数を割り込んでおり、選挙結果次第では離脱協定案の承認が順調に進まないことも十分に考えられます。
仮に離脱協定案が議会で承認されたとしても、EUとの貿易交渉の期限は2020年末となっており、その間にFTA等の締結ができなければ関税が復活し結果的にハードブレグジットとなってしまいます。
そもそも
おそれがあるでしょう。

合意ありでも合意なしでも方向感が出れば金利は上昇か
足もとの英国の長期金利は、投資家の利回りハンティングで英国債が買われている影響から、0%台後半と低位で推移しています。
しかし、EUからの離脱の方針が明確になれば、長期金利は上昇すると考えられ、英国債を保有している投資家は注意を要します。
確率は下がってはいますが、「合意なし離脱」となった場合には、通貨ポンドが売られ輸入物価が上昇することで、大幅なインフレとなることが想定されます。
その結果、英国の中央銀行は利上げを余儀なくされ、長期金利は上昇するでしょう。
また、「合意あり離脱」となった場合には、合意の結果が好感され英国の株式市場は上昇することが考えられます。
リスクオンになる結果、債券は売られ長期金利が上昇します。
つまり、
と考えられるため、債券投資家は英EUの交渉を注視しておく必要があるといえます。
離脱後の英国にはEUの強気姿勢が濃厚

英国がEUから離脱する主因となった移民の受け入れについては、さまざまな問題が絡み合い非常に難しい問題ではあります。
しかし、経済面から見れば、英国はEUから離脱しないのが賢明なのは明らかです。
英国は、EUからの離脱後、EUや他の国々と個別に貿易協定を締結して、従来通り物やサービスの移動を円滑に行うことを想定しているようですが、各国・地域と個々に協定を締結するには時間も人材も要し、そう簡単なものではないでしょう。
仮に、各国・地域と貿易協定を締結できるにしても、3回も離脱期限を延期し、何も決められないことを露呈してしまった英国に対して、世界の企業は拠点を既に英国から欧州大陸に移し始めています。
その結果、特に英国の製造業の業況を表す指数は軒並み悪化してきており、今後英国経済の足を引っ張ることとなるでしょう。
また、これまで「合意なし離脱」になることを極端に恐れて弱腰であったEUも、離脱後の英国には強気の姿勢で対応するしかなくなると思われます。
それは、イタリアやギリシャのような反EU勢力が強い国々が、英国に追随してEUから離脱しようとするのを防ぐ必要があるからです。
EUのバルニエ主席交渉官が
とコメントしていることからも、英国に対して強気で対応していくことが必要となるでしょう。(執筆者:土井 良宣)