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最低の経済成長率と信用リスクの増大
中国の2019年7-9月期のGDPは、前年同期比6.0%増と4~6月期から0.2ポイント下落し、1992年の四半期統計開始以来最低の伸び率となりました。
これは、世界的な景気減速懸念や米中の貿易摩擦による内外需の減少が大きく影響しています。
IMFの10月の世界経済見通しの改定においても、中国の2019年のGDP成長率見通しは6.1%と低く、2020年には5.8%と中国政府が最低限維持したいと考えている6.0%を下回る低成長になると見込んでいます。
このような状況を打開する方法として、中国政府による財政出動が考えられますが、リーマンショック直後に実施した大規模な景気刺激策に伴う債務が積み上がっており、李克強首相も「バラマキは行わない」と強調しています。
また、民間の債務残高もここ数年膨張しており、日本の地方銀行に当たる地方商業銀行の中には、不良債権問題から国有化せざるを得ない銀行も出てきています。
従って、中国政府による大胆な景気刺激策は期待薄であり、しばらくは低成長が続くと思われます。

米中問題は貿易摩擦から覇権争いへ
足許、米中の通商交渉が進展するとの見通しから、世界的に株価は上昇しています。
しかし、少なくとも第一段階の合意内容は、中国による外資規制緩和や米国の農産物の購入拡大といった従来の合意の焼き直しにすぎず、また両国にとって痛みのない分野に限られています。
そのため、今後の交渉が順調に進んでいくという見方も出てきていますが、過度の楽観は禁物です。
そもそも、2018年に米国が中国に対し追加関税を課し始めた際には、対中の貿易赤字の縮小を目的としていた訳ですが、いつの間にか技術覇権の争いへと目的が転換されてしまっています。
これは、貿易摩擦を解消すれば済む話ではなく、中国の産業構造自体の変化を伴うものです。
そのため、米中の覇権争いは短期的に終結するものではなく、長期間続いていくことを覚悟しないといけないでしょう。
構造的に低い成長率が続く中国経済
ここ数年の中国から日本への観光客は、それ以前の富裕層だけではなく、中間層が多くみられるようになっています。
以前であれば、百貨店で高級ブランドを購入して帰るといったことが多かったのが、近年はドラッグストアで比較的安価な化粧品を爆買いしているというのは有名な話です。
これは、中国の経済成長が一定レベルまで達した結果、所得が増えた人たちが日本に旅行に来て買い物をしている訳です。
中国のGDPは2019年には14兆ドルを突破するとみられており、一人当たりのGDPはまだ低いものの、先進国の仲間入りをしたといっても過言ではないでしょう。
自転車社会であった中国がモータリゼーションで車社会に代わってきたように、新興国が先進国の水準に達するまでは高度な経済成長を続けることは可能です。
しかし、先進国の水準に達した後は、日本や米国のように経済成長率は巡航速度に落ち着きます。
つまり、現在の中国は以前のような年率10%を超すような成長を続けることは不可能なレベルまで達したといえ、今後は低成長が続くと思われます。
また、2015年まで「一人っ子政策」を採用していた中国は、人口構成がいびつな形になっており、今後急速に高齢化が進むと思われます。
そのことも経済成長の足かせになってくるといえるでしょう。(執筆者:土井 良宣)