貯金を増やす方法は2つに大別されます。
1. 収入を増やすこと
2. 節約に励むこと
ところが前者には陥りがちな落とし穴があります。
年収が上がると「相応の生活」を求めるがゆえに、生活コストが上がってしまうのです。
総務省が実施している「家計調査」の結果から、年収に応じて人々が何にお金を投じるようになるのか、探ります。
目次
年収が多いほど支出も多い
下の表は2人以上の世帯を対象に、ひと月あたりの家計収支について調査をした結果です。
回答者の年収を低い方から順に1~5までの5グループに分け、それぞれのグループの平均値を示したものです。
年収に比例して、支出額は増えています。
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1 と2 の年齢が高くなっているのは、このグループに多くのリタイア世代が含まれているためです。
また表の赤い枠線内の数字を見ますと、年収が多いほど世帯人員の数も多いため、ある程度の生活コストの上昇はやむを得ないと言えます。
年収が上がると肉をよく食べるようになる
次に食費を見てみましょう。
こちらも世帯人員が増えれば食費も上がりますが、詳しく見てみると、大きく上昇している食品とそう変わらない食品で傾向が分かれています。
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赤い枠線で囲んだ品目をご覧ください。
「肉」、「お菓子」、「外食」は世帯人員数の増加分だけでは説明がつかないほど、年収が増えるにつれて上がっています。
肉代については、量はもちろんのこと、外国産ではなく国産、豚肉や鶏肉ではなく牛肉を選ぶと費用がかさみます。
また収入の高い家庭ほど忙しく、外食に頼る場面が多いのかもしれません。
その他の項目の米やパン(穀類)、野菜、魚、果物などは、年収による大きな違いは見られず、どの家庭でも似たような費用をかけています。
年収1,000万超のひと月の服代は、年収250万の4倍
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年収によって差が出る支出項目は被服代です。
平均年収252万円の1グループに対して、平均年収1,183万円のⅤグループは、ひと月あたり4倍の金額を服に費やしています。
枚数もそうですが、ファストファッションではなくブランドにこだわると、服代はかさみます。
年収が上がると子供の塾代がかさむ
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教育は子供の年齢によって、大きく差の出る費用です。
2 ・3 グループの世帯主の年齢では、子供は成人しているケースが多いでしょう。
3 ~5 グループの世帯主年齢は、子供が高校生から大学生くらいで1番教育費のかかる時期です。
年収による差が大きいのは授業料です。
3 グループの費用内で収まるのは公立、5 グループの費用ですと私立に通う子供が1人以上いるイメージになります。
また塾代(補習教育)も年収によって大きく異なります。
定額のオンライン講習や通信教材を使えば安く済みますが、個別指導塾に通えば費用はかさみます。
年収の高い人は旅行や習い事に費用をかける
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年収が上がるにつれて、支出が多くなる項目に教養・娯楽費があります。
よく年収の高い人ほど読書家と言われますが、データで見るとひと月あたりの書籍代は年収によってさほど違いはありません。
費用をかけているのは旅行と習い事(月謝類)です。
また動画配信サービスや映画館の入場料などは一番下の「他の教養娯楽サービス」に分類されると推測されるため、そういった娯楽に関する費用がかさむようです。
高年収にかかる4つの雑費
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雑費の支出を詳しく見てみますと、年収が高くなると、
・ こづかい
・ 交際費
・ 仕送り
の4つのコストが掛かってくることがわかります。
3 ~5 グループの世帯主の年齢ですと、高齢の親へ仕送りをしている家庭も相当数あると推測されます。
年収が上がっても生活コストを上げないことが肝
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総務省の家計調査を眺めていると、年収が上がるにつれて、さまざまな項目に対して「こだわり」が出てきていると感じます。
と考えるのも無理はありません。
しかし、生活コストをどんどん上昇させてしまうと「高年収貧乏」に陥るリスクがあります。
全てのこだわりを捨てなければならないわけではありません。
・ 化粧品は口コミを調べて、安くても高品質なものを使う
・ 子供の進路について、子供本人とよく話し合う
・ 洋服は定額のレンタルサービスを利用する
など、こだわりは維持しつつ、それを得るための代替手段を探すことが大事です。
1番怖いのは、「高年収家庭はこんなもの」というイメージを先に作り上げて、深く考えずにお金を注ぎ込むことです。
特に同じくらいの年収の家庭同士で付き合うようになると、「他の家庭もこうだから、うちも」と、影響を受ける場面が増えます。
それぞれの家庭に合った方法で、生活コストはしっかり抑えていきましょう。(執筆者:石田 彩子)