会社員が業務外の病気やケガで働けなくなったときは、健康保険の「傷病手当金」を受給できる場合があります。
ですが、傷病手当金の受給中に会社の休職規定や退職勧奨などで会社を辞めてしまった場合、会社の健康保険から支給されている傷病手当金はどうなるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
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目次
健康保険の「傷病手当金」とは?
まだまだ働き盛りの年齢なのに、ガンやうつ病など長期の療養が必要な病気になってしまった場合、プライベートでの交通事故やレジャー中の大けがなどで長期に仕事を休むことになってしまった場合、収入が途絶える心配が出てきます。
企業の健康保険組合や協会けんぽなど、会社員が加入している健康保険には、業務外の病気やケガで働けなくなった場合に生活保障として一定額が支給される「傷病手当金」の制度があります。
【注意】会社が健康保険の適用事業所ではない場合
常勤の従業員が5人以下の会社や個人事業主に雇用されている場合など、健康保険制度に加入していない事業所もあります。
従業員が自分の国民健康保険を使っている場合、国民健康保険には健康保険のような「傷病手当金」の制度はありません。
健康保険の「傷病手当金」の受給要件
傷病手当金は次の4つの条件をすべて満たすときに支給されます。
(1) 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
(2) 仕事に就くことができないこと
(3) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
(4) 休業した期間について給与の支払いがないこと
(引用元:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」)
退職後に引き続き傷病手当金を受給できる要件
会社在職中に傷病手当金をもらいはじめ、休職ののちに退職してしまった場合、引き続き傷病手当金を受給できる要件は以下の通りです。
資格喪失後の継続給付について
資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態[(1)(2)(3)の条件を満たしている]であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。ただし、一旦仕事に就くことができる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。
(引用元:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」)
注意したいのが、休業中に退職することになり「退職日だけ頑張って出勤した」という場合です。
退職日は「被保険者資格喪失日の前日」にあたります。
この場合、
ということになるため、退職後に引き続き傷病手当金を受給できる要件に当てはまらなくなってしまうのです。
退職日に出社して挨拶だけでも…という場合は、その出社を出勤扱いにしないように会社と相談してください。
健康保険の「傷病手当金」はいつまでもらえるの?
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傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6か月です。
これは、「傷病手当金の日額 × 1年6か月分」を払い終わるまで支給されるということではなく、支給開始した日からの日数が1年6か月になるまでという計算になります。
休職して傷病手当金をもらっていたが、いったん回復して仕事に復帰したその後でまた同じ病気がぶり返して休職してしまったという場合でも、途中の復帰期間も含めて「支給開始から1年6か月まで」という制限があります。
傷病手当金がもらえなくなった後はどうなるの?
傷病手当金は、支給開始日から最長で1年6か月支給されます。
しかし長期の療養が必要な病気・ケガで1年6か月を超えてもまだ働ける状態にない場合、どうすればいいのでしょうか。
結論から言えば「障害年金」もしくは「生活保護」の申請を検討することになります。
どちらも国民のセーフティーネットとして設けられた制度です。
各自治体で障害福祉サービスや生活困窮者自立支援相談が行われているので、ひとりで思いつめたり家族だけで抱え込んだりせず、まずは相談してみましょう。(執筆者:2級FP技能士 久慈 桃子)