私たちが小さい頃からなじみのある、「赤い羽根の共同募金」という募金活動があります。
募金をするとシンボルカラーの羽をもらうことができるので、学校や街頭で募金をした証として上着に付けたという経験がある人も多いことでしょう。
子供心には何となくカッコいい、きれいな羽根をもらってうれしいという感覚だったように思います。
大人でも、職場でスーツの胸もとや国会中継において議員さんらが襟もとに共同募金の羽根を付けている姿をみかけます。
共同募金は、私たちの社会に長く深く根付いています。
しかし、どのカラーの羽根がどの目的の募金なのかをご存じない人もいるでしょう。
また、超高齢化社会である日本において、共同募金が高齢者福祉の分野に大きく寄与していることもあまり知られていません。
今回は「赤い羽根の共同募金」の概要とともに、高齢者福祉とのかかわりについてみていきましょう。
目次
共同募金 羽根の色別に概要をおさらい

共同募金には
・ 赤い羽根
・ 緑の羽根
・ 青い羽根
があります。
それぞれの募金の目的、実施される時期や歴史を紹介します。
赤い羽根
社会福祉を目的に、10月~3月末に実施されます。
赤い羽根は共同募金のシンボルです。
はじまりは1913年アメリカのクリーブランド市で、そもそも、赤い羽根は領収書の代わりに人々に渡されていたのです。
日本では諸説ありますが、1921年に長崎県社会事業協会が長崎市で行ったのがはじまりといわれ、当時は赤い羽根ではなく造花のバッチが渡されていました。
緑の羽根
緑化促進を目的に、2月~5月および9月~10月に実施されます。
緑の羽根共同募金は、国土の緑化と、緑化思想の拡大を目指し1950年から行われています。
青い羽根
海難救助活動の支援を目的に、7月~8月に実施されます。
1950年に海難救助のボランティア団体「社団法人 日本水難救済会」が海難救助活動を支援するためにはじめました。
その他にも、全国的に行われている活動ではありませんが、ピンクの羽根や黄色い羽根なども実在します。
福祉に役立てられる「赤い羽根共同募金」

共同募金運動は、都道府県を単位にして行われています。
赤い羽根共同募金で集まったお金は、子どもや障がい者、そして高齢者の支援や福祉活動に役立てられます。
共同募金は、事前に使い道と目標金額を定めて実施されています。
例えば、高齢者福祉の場合には、高齢者が集うサロンの運営、福祉車両や福祉施設の改修の費用に充てられることもあります。
平成30年度の活動の対象は高齢者が23.5%を占めています。
これは障が者や児童・青少年に比べて高い割合です。
また、活動内容は「社会参加・まちづくり支援」が1番多くなっています。
これらのことから少子高齢化である今、高齢になって障がいを抱えても社会参加できることへの支援が広がっていることがわかります。
(参考元:赤い羽根データベース はねっと)
「赤い羽根共同募金」使い道の具体例
実際の赤い羽根共同募金の使い道として、高齢者福祉の分野では次のように運用されています。
・ 通院および送迎用車両の更新
・ 福祉施設の老地区化したエレベーターの改修工事費用
・ ボランティア活動推進事業
・ 弁当の配食サービス用の車両
・ ふれあいサロン事業
・ 福祉のまちづくり事業推進
・ 地域から孤立をなくす活動支援事業
・ 手作り品販売のための支援事業
・ 高齢者の居場所づくり開設事業
どれも、高齢者が社会から孤立せず、健やかな日々を送るために有用なサービスであり、それを支えているのが全国の赤い羽根共同募金なのです。
ささやかな募金が地域の住み良い暮らしを支えている
実際に赤い羽根共同募金の助成金で行われた活動には、高齢者のための住み良い社会づくりのための支援に充てられている事業が多く見受けられました。
小学校の廃校を再利用し高齢者の集う場として展開するなど、少子高齢化の流れを感じる新たな取り組みもあります。
募金活動は草の根活動であり、ひとりひとりの募金の金額は少額です。
しかし、その少しずつの善意が、高齢者の居場所づくりやボランティアの活動を支える大きな役割を担う力になっています。
こうして構築されていく住み良い地域の恩恵を、私たちは無意識に受けているのです。
これからも、このつながりを絶やすことなく、将来の福祉活動や環境づくりに無理のない金額・募金という形で参加できるとよいですね。(執筆者:佐々木 政子)