2019年は老後2,000万円問題が取り沙汰され、老後資金準備に使える
・ NISA
・ つみたてNISA
・ iDeCo
といった税制優遇制度がより一層広まりました。
どの制度をどれくらい使うかは個人の状況によって異なりますが、いずれの場合も
が重要なことには変わりありません。
本記事では、今から考えておきたい各制度の出口戦略についてご紹介します。
目次
期限が差し迫るNISAは売り時に要注意

2014年にスタートした「少額非課税投資制度(NISA)」は、制度の恒久化が見送られ、現状では2023年末に新規口座利用がストップすることになっています。
NISAの運用益非課税期間は5年間であるため、過去の投資分をロールオーバーした場合にも最長で2028年までの利用となります。
含み損を抱えないことがポイント
ロールオーバーを含めた非課税期間を過ぎてしまうと特定口座に移管するか売却することとなりますが、この時もし含み損を抱えていたら、非課税どころか損をする可能性が高くなります。
まず特定口座に移管するケースでは、移管する時点での時価が取得価額という扱いになるため、移管時の含み損まで課税対象になってしまいます。
一方で特定口座に移管せず売却した場合にも、NISA口座内の損失は他の口座との損益通算ができないため純粋な損失にしかなり得ません。
非課税期間終了時点で含み益がある場合には、利益確定して非課税優遇を受けるか、特定口座に移管しても課税対象が狭まるメリットがあります。
つまり、NISA口座では、非課税期間終了時点で含み損を抱えていないようにするのが重要なポイントになります。
売り時をイメージしておく

しかし、短期売買に慣れていない人にとって5年間の非課税期間は意外と短く、いつ利益確定すればベストなのか判断に困ることも十分にありえます。
売り時を逃し続けて万が一終了間際にリーマンショック級の大規模な暴落があったら、どうしようもなくなってしまいますので、いつ売るかのイメージを持っておいた方が安心です。
具体的には、
という数値目標を決めておき、機械的に処理するのがオススメです。
値上がりしている局面ではもっと上がるかもしれないから待っておこうと思ってしまいがちですが、それこそ売り時を逃してしまう典型的なケースです。
〇〇円以上になったらお知らせを受信するよう金融機関のアプリなどでアラート登録しておき、アラートが来たら無心で売却処理をするぐらいの方が安心です。
いくらで売るのか、いつ売るのかは保有銘柄や個人の状況によってさまざまではありますが、何となくでも決めておくことが大切です。
つみたてNISAは長期的視点で

一方、つみたてNISAは少額かつ非課税期間が20年と長く設定されていますので、基本的には短期売買ではなく長期保有を前提としている方が多いと思われます。
投資対象も条件を満たした投信とETFのみなので、インデックス型の投信などを中心に組み入れているケースがほどんどではないでしょうか。
そもそも長期保有で福利効果を狙うための制度であるので、NISAほどはっきりした出口戦略を立てる必要はありません。
しかし、非課税期間内で利益確定させないと非課税メリットを受けられないという点ではNISAと変わりありません。
今後20年の景気予想はプロでも困難だと思われますが、経済ニュースをチェックする習慣をつけて
・ 万が一暴落しても、焦らず保有しつづける
ことくらいは決めておいた方が良いでしょう。
非課税期間中は保有し続けるのが賢明
特に後者のように投資対象が暴落して含み損を抱えてしまうと、これ以上下がったら…という恐怖心から手放したくなるものです。
しかしつみたてNISA口座内で損失を出してしまうと、損益通算ができないという大きなデメリットがあります。
これまでの株価の値動きを見ても、暴落時点で非課税期間がまだ残されているなら、売らずに保有し続ける方が賢い選択になりそうです。
特にインデックス投信であれば毎日時価をチェックするほどのことは必要ありませんが、最近では米中協議、来年ではオリンピックによる経済への影響など、経済に関わる大きなニュースには目を通しておいた方が無難です。
iDeCoは受け取り方も重要。金融機関によって違いも

iDeCoの制度自体はつみたてNISAと似ており、加入者の年齢にもよりますが、基本的には長期運用による福利効果を狙うための制度といえます。
ただしiDeCoの場合は60歳まで受け取れないことになっています。
そのため「売り時」は考えなくて良いと思われるかもしれませんが、実は利益確定に準ずる行動をすることも可能です。
利益確定をしたら現状を維持する
iDeCoでの利益確定では、
・ 新規の掛金の投資対象を変える「配分変更」
・ これまで積み立ててきた資産の配分を変える「スイッチング」
この2つを使います。
つまり、利益が十分に出た時点で運用資産を全て元本確保型の定期預金などの商品に変えることで、その後の値動きがないようにするのです。
商品によっては「信託財産留保額」と呼ばれる解約手数料にあたる費用が発生するので、頻繁にスイッチングすることはオススメできませんが、利益確定には必須の仕組みです。
また、利益確定をして今後も積極的な運用を行わない方針であれば、掛金の積立もストップした方がお得です。
これは、掛金を拠出するかどうかで口座維持手数料が変わってくるためです。
逆に、十分な利益が出ないまま60歳に到達してしまった場合には、運用指図者となって運用を継続するのも手です。
受け取り方には3つの方法がある

さらに、iDeCoの場合はその受け取り方も重要なポイントです。
1. 一時金としての受け取り
2. 年金としての受け取り
3. 金融機関により一時金と年金の併用(併給)
の3パターンから選ぶことができます。
いずれの場合も受け取る金額は課税対象となってしまいますが、一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除が使えますので、控除額を超えないよう調節すれば非課税メリットを最大限に享受できます。
最も良いパターンは、
です。
もともと退職金や年金が多い人は控除金額内に収めることが難しいかもしれませんが、そうでない場合はなるべく控除額を意識した受取方法を選択した方が良いでしょう。
ただし、金融機関によって併給ができないケースや年金としての受取期間の上限が短い場合があるので、利用している金融機関の規約を確認しておく必要があります。
出口戦略を定めて税制効果を存分に生かそう
NISA、つみたてNISA、iDeCoといった税制優遇制度を存分に生かすには、「出口戦略を定めておく」ことが大事なポイントになります。
長期保有をするにしてもある程度の利益確定基準は定めておかないと、気づいた時には資産が目減りしてしまっているリスクもあります。
また、いずれの制度も期間延長や制度内容の見直しが常に検討されていますので、制度改正のニュースも日々チェックしておきたいところです。(執筆者:島村 妃奈)