日本企業の特徴的な雇用習慣と言えば、終身雇用と年功序列です。
ひとつの企業に長く勤めあげることが美徳というように長いこと考えられてきました。
リストラなどの人員整理は不況時や経営不振に陥った企業がやむを得ず行う施策といったイメージでしたが、近年は定年延長などに起因して企業側も多くの社員の雇用維持が難しくり、リストラも珍しいことではなくなりました。
2019年は6年ぶりに希望・早期退職者の人数が1万人を超え、旧態依然とした働き方が通用しにくくなっているのが現状です。
目次
ダブルワークという働き方
そこで注目されているのが本業と副業を並行して行う「ダブルワーク」という取り組みです。
ダブルワークでは、収入の増加といったメリットの他に、本業では得られないキャリアの構築や社外の人間と積極的に交流を持つことでコミュニケーション範囲の拡大などが期待できます。
しかしその反面、業務や通勤に起因する労働災害については注意が必要です。
以降で、ダブルワークの最大リスクである副業時の労働災害補償について説明していきたいと思います。
労働災害の補償の仕組み
パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、原則として1人でも従業員を雇う場合、事業主は従業員の労働災害に備えた「労災保険」に加入することになっています。
労働災害保険では、「治療費の給付」や「休業の補償」、障害が残ってしまった場合の「傷病補償」といった給付を受けることができます。
しかし、休業補償と傷病補償の給付額は、労働災害が発生した事業主から得ていた収入をベースに算出されるため、収入の少ない副業中に労働災害にあってしまった場合には、本業での休業補償に比べて少ない給付額しか得ることができません。
仮に本業で月平均15万円の賃金と副業先で月平均5万円の賃金を受け取っていた場合、
副業の労働災害保険の休業補償は5万円の60%で月額3万円
となり、大きな隔たりがあるのです。
また、労働災害には、「業務中の危険によって発生する業務災害」のほかに「事業所への移動中の事故などによって生じる通勤災害」の2つが存在します。
業務災害は危険性の少ない副業を選択するなどコントロールすることも可能ですが、通勤災害は相手方に起因することもあるので十分な対策を行う必要があります。
補償が手薄にならないように注意

労働災害による休業・傷病補償の額は、勤務先の収入をベースに給付額が算出されます。
本業と比較して収入の少ない副業中に労働災害に遭遇し、休業に至ってしまった場合、本業での労働災害時よりも少ない給付額しか得ることができません。
万が一の際に、給付額が足りないという事態にならないよう、業務災害・通勤災害といった労働災害に遭遇する恐れのあるダブルワークを行う場合には、収入保障保険や所得補償保険などの保険を活用し、補償が手薄にならないよう注意することが大切です。(執筆者:菊原 浩司)