日経新聞などの報道によると、スウェーデン中央銀行のリクスバンクは、1月8日付けでマイナス金利0.25%を0%に引き上げると発表しました。
このリクスバンク(日本では日本銀行)の決定は、マイナス金利政策の効果が出て景気や物価が改善したためではなく、低金利により住宅市場が過熱しすぎたためです。
やむを得ずマイナス金利を実施している、欧州各国や日本においても住宅市場の過熱が問題になっており、リクスバンクの決定は将来の日本銀行においても、マイナス金利打ち切りの遠因になるかもしれません。
今回は、スウェーデンでマイナス金利が打ち切られた背景、日本で同じことが起こった場合のリスクと対処法について考えます。
スウェーデンでは住宅市場が過熱
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スウェーデン中央銀行のリクスバンクは、リーマンショックが起こった翌年の2009年に、世界で初めてマイナス金利を導入しました。
それにより景気や物価の改善が期待されましたが、実際に起こったのは、銀行が提供した低金利の住宅ローンによる住宅市場の過熱でした。
住宅市場に大量の資金が流れ込んだために住宅価格が高騰、また低金利で家計の債務も増え、住宅バブルだった2007年のアメリカの水準も上回りました。
リクスバンクは、住宅市場が金融と経済の両方にリスクをもたらしているとして、マイナス金利を打ち切った訳です。
これにより、今後スウェーデンにおいては、住宅価格の下落や住宅ローン金利の上昇などが起こると考えられ、住宅市場は調整局面を迎えそうです。
日本でマイナス金利が打ち切られた場合
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ここまでスウェーデンで起きていることを書きましたが、同じようなことは既に日本の首都圏などで起こっています。
マイナス金利とオリンピックにより大量の資金が住宅市場に流入、住宅価格は高騰しています。
また、銀行が提供している住宅ローン金利も、過去には考えられないほどの低金利で、これが家計の債務を膨張させています。
日本では、
・ マイナス金利打ち切りで円高になる懸念があること
などから、すぐにマイナス金利が打ち切られることはないでしょう。
しかし、現在の首都圏マンション価格は明らかに高すぎることから、マイナス金利打ち切りで、住宅市場が一気に不安定化することが想定されます。
そして、仮にマイナス金利が打ち切られた場合、真っ先に影響を受けるのが住宅ローン金利の上昇です。
そう考えると、現在は住宅の買い時ではありませんが、家計のライフステージとして住宅が必要な場合、金利が変わらない全期間固定金利で住宅ローンを組むのが安全です。
日本銀行が今後の事をどこまで想定しているかわかりませんが、マイナス金利の副作用が注目される中、マイナス金利打ち切りという事態も考えておく必要がありそうです。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)