e-Taxを利用をする場合は別ですが、紙媒体で確定申告をする場合はさまざまな添付書類を用意しなければなりません。
給与所得者であれば、給与から源泉徴収された金額を証明するために「源泉徴収票」を提出する必要があります。
フリーランスや副業で報酬を稼いだ場合には、源泉徴収票に代わる書類として「支払調書」があります。
ところが、この「支払調書」が手元になく、確定申告をどうすればいいのか不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
「支払調書を保管していないことで何らかのペナルティを受けるのではないかと心配している方もいらっしゃることでしょう。
そこで今回は、フリーランスや副業をしている方で「支払調書」が手元にない場合にどうやって確定申告をすればいいのか、ペナルティを受けることはないのかということを解説します。
答えを知れば単純なことですが、特に初めて確定申告をする方は気になるところだと思います。
この記事を参考にして安心して確定申告をしていただければと思います。

目次
確定申告で「支払調書」は提出不要
結論として、
そもそも確定申告書に「支払調書」の添付は求められていません。
まれに税務署の職員から「支払調書」を提出してください」と言われるケースもあるとも聞きます。
しかし、そのようなケースは「源泉徴収票」と言われたのを聞き間違えたか、もし本当に「支払調書」と言われたのなら職員の勘違いとしか考えられません。
「支払調書」がない場合は帳簿に基づいて確定申告をする
「支払調書」がなくても、確定申告をするのに苦労することはありません。
帳簿に基づいて報酬の発生額と源泉徴収額を計上するだけです。
どこに計上するのかというと、「青色申告決算書」または「収支内訳書」(白色申告の場合)です。
この2つの書類はどこかから送られてくるものではなく、自分で作成するものです。
事業所得がある場合は収入額と経費の内訳を明らかにするために「青色申告決算書」または「収支内訳書」を作成し、確定申告書に添付して提出します。
さらに「支払調書」を添付する必要はありません。
「支払調書」があればこれらの書類の作成がラクにはなります。
しかし、どうせ「支払調書」の内容が帳簿の記載と合致しているかどうかを確認しなければならないので、結局はそれほど労力に違いがあるわけでもありません。
なお、給与所得のみで確定申告する場合はこのような書類の作成は不要ですが、その代わりに源泉徴収票を提出する必要があります。
確定申告で「支払調書」を提出しなくてもペナルティは一切ない

確定申告で「支払調書」を提出することは求められていないのですから、提出しなくてもペナルティはありません。
「支払調書」を保管していなくてもペナルティは一切ないので、安心してください。
本来の「支払調書」というのはフリーランスや副業で報酬をもらった人が受け取る書類ではありません。
「支払調書」は依頼主から税務署へ提出されている
「支払調書」とは、フリーランスなどの個人へ依頼した業務の報酬について源泉徴収をした場合に発行されるものです。
所得税法上、依頼主は「支払調書」を税務署へ提出することを義務づけられているので、個人が確定申告の際に「支払調書」を提出しなくても税務署は報酬額も源泉徴収税額も把握できます。
依頼主が業務を依頼した先の個人に対して「支払調書」を交付する義務はありません。
もっとも、交付する義務がなくても個人に対して「支払調書」を交付している企業は従来から多くありますが、それは取引上の慣習だったり、大事な取引相手の便宜のために厚意で交付されているものに過ぎません。
「支払調書」が欲しい場合は依頼主に頼めば発行してくれることもありますが、発行してもらえなくても法律上は何の問題もありません。
したがって、フリーランスなどの個人の手元に「支払調書」がなくてもペナルティは一切ありません。
源泉徴収票はなぜか提出を求められる
会社に勤務しながら副業をしている方が確定申告をする場合は、会社から交付される源泉徴収票を確定申告書に添付して提出しなければなりません。
給与所得についての「源泉徴収票」と事業所得についての「支払調書」はパラレルのような構造になっています。
そのために、個人事業主が確定申告するときには「支払調書」を提出しなければならないのではないかという疑問が生じてしまうのだと思います。
しかし、よく考えれば本来は源泉徴収票も確定申告の際に提出する必要はないはずです。

源泉徴収票も勤務先会社から税務署へ提出されている
源泉徴収票も「支払調書」と同じように、所得税法上、給与を支払った会社が発行して税務署へ提出することが義務づけられています。
したがって、給与所得者がわざわざ源泉徴収票を税務署に提出しなくても税務署は給与額と源泉徴収税額を把握できます。
それなのに確定申告の際に源泉徴収票の提出を求められる理由はまったく不明です。
源泉徴収票が「支払調書」と異なる点は、給与を支払った会社は給与所得者に対しても源泉徴収票を交付する義務があるという点です。
とすれば、税務署の事務負担を軽減するために確定申告の際に源泉徴収票の提出を求めているとしか考えられません。
「支払調書」は報酬を受け取った個人のすべてに交付されているとは限らないため提出は求めないが、源泉徴収票は給与所得者のすべてに交付されているはずだから提出を求めていると考えられます。
もし手元に源泉徴収票がない場合は、会社に発行(または再発行)を依頼して、それでも発行してもらえなければ源泉徴収票不交付の届出をするなどの面倒な手続きを税務署から指示されます。
しかし、そんな手続きをとらなくても給与明細で代替して確定申告できたというケースもあります。
電子申告でも源泉徴収票の提出は必要か
税制改正によって、2019年4月1日以降は源泉徴収票を確定申告の際に提出する必要も保管する必要もなくなりました。
しかしながら、国税庁のホームページでは現在でも確定申告の際に源泉徴収票を提出することを求めています。
紙媒体で申告する場合は紙媒体の源泉徴収票を確定申告書に添付することが必要であり、e-Taxを利用した電子申告の場合でもデータ形式の源泉徴収票をオンライン送信することが必要とされているのです。
その根拠はやはり不明ですが、無用なトラブルを避けるためには提出しておいた方が良いでしょう。
国税庁が求めるものは提出しよう
フリーランスなどの個人が確定申告をする場合は、「支払調書」を提出する必要はありません。
「支払調書」を保管する必要も依頼主から交付を受ける必要もなく、手元にないからといってペナルティも一切ありません。
ただし、給与所得がある場合は源泉徴収票の提出を国税庁が求めているため、従っておきましょう。(執筆者:川端 克成)