今回は、減速するインド経済の現状と今後の展望、為替推移について解説していきたいと思います。
目次
1. 7~9月期の国内総生産(GDP)は6年半ぶりの低水準に

インド経済の減速は鮮明となり、19年度7~9月期国内総生産は前年同期比4.5%増と6年半ぶりの低水準となり、原因は以下の通りです。
企業向け融資の低迷
18年夏にノンバンク(預金などを受け入れず、信用供与を業務とする金融会社。信販会社やリース会社など。)が債務不履行を引き起こしたことにより、各金融機関は企業への融資に慎重になっています。
これにより、自動車ローン等を借りることが難しくなり、資金の流動性が減速しています。
改正国籍法によるデモ
モディ政権下では、イスラム教徒を排除する姿勢を強めており、イスラム教徒以外の不法移民に国籍を与える「改正国籍法」をきっかけにデモが拡大しています。
これにより、経済低迷に拍車をかける結果となっています。
2. 市場は政策金利引き下げ、財政出動を望んでいる
このような情勢下、インド中銀は金利引き下げによる金融緩和をする必要があり、10月までの5会合連続で政策金利を1.35%引き下げ5.15%としました。
しかし、高額紙幣廃止の混乱が尾を引く形で貸出金利にまでその効果は波及していません。
そのため、12月の利下げを望む市場参加者は非常に多く、市場もそれを織り込む形で推移しましたが、市場の予想とは裏腹にインド中銀は金利の据え置きを決断しました。
2019年度(2019年4月~2020年3月)のGDP成長率の見通しも6.1%から5.0%に下方修正されたことから、インド経済の回復には時間がかかるものと思われます。
3. 為替は低水準で推移

現在のインド・ルピーは1.5円台で推移しています。
チャートより、ルピーは1.5~1.9円のボックス圏で推移しており、中央線を1.7円と考えると±0.2円のレンジで推移している可能性があります。
現在の為替は低水準で推移しており、株式市場への資金流入が一服することで、新興国市場への資金流入が見込めることから、セルインメイが今年当てはまるかどうかに注目しておいた方がいいでしょう。
セルインメイは当てはまるのか
以上より、高成長を背景に安定していたインド経済は政策の節目に差し掛かっている可能性があるため、今後のモディ政権の方向性を慎重に見極める必要があります。
また、為替が円高で推移していることから、相場格言であるセルインメイが今年当てはまるとすると、年後半にかけて為替が円安方向に振れる可能性も考えられるため、その動向には注目しておきましょう。(執筆者:白鳥 翔一)