介護が必要になる原因はさまざまですが、中でも疾病が原因で要介護状態に陥る事は多くあります。
疾病内容によっては入院治療が必要な場合があり、医療費の支払いが高額になる事もあるでしょう。
そんな時の強い味方が「医療費控除制度」です。
医療費控除とは簡単に言うと「1年間で一定金額以上の医療費等の支払いがある人は、税務署に申告する事によって一定割合の還付金が受けられる制度」を言います。
医療費控除制度自体は周知度が高いといえますが、医療費控除に当てはまる費用は意外と多いです。
今回は、見落としてしまいがちな医療費控除に該当する費用を紹介していきたいと思います。

目次
介護老人福祉施設を利用した場合は「医療費控除対象費用」確認
まずはじめに挙げられるのは、介護保険施設の費用です。
医療が必要な方が入所・入院している「介護老人保健施設」と「介護療養型医療施設(介護医療院)」は施設サービス費・食費・居住費の全額が医療費控除の対象です。
対して、介護老人福祉施設の場合は施設サービス費・食費・居住費の半分が医療費控除の対象です。
両者に共通する事項としては、
(2) 日常生活用品費用等の実費は対象外となる事
が挙げられます。
領収証の費用負担項目に「医療費控除対象費用」と記載されているため、そちらで確認するようにしてください。
領収証の中にその文言が記載がされていない場合は、利用した施設に問い合わせ、対象の費用負担項目がある場合は必ずその文言を入れてもらうようにしてください。

おむつを使用している場合には、おむつ使用証明書
次に挙げられるのが、おむつ代やパット代等の排泄用品です。
排泄に介助が必要な方は、紙おむつやパットの使用は毎日の事であり、費用負担は大きくなるので、対象の方は必ず申請しましょう。
おむつ代やパット代を医療費控除として認めてもらうためには、疾病等によりおむつが必要である期間が6か月以上継続している事と、医師からおむつ使用の必要性がある事が認められている事が条件です。
それを証明するためにはおむつ使用証明書を医師から発行してもらう必要があり、その文書料は自己負担ですので注意してください。
介護は長期間となる事もあるため、翌年以降も医療費控除として申請する事も考えられます。
2年目以降の申請は、介護認定の際の主治医意見書の写しで代用する事も可能な場合がありますので、担当の介護支援専門員に相談する事をおすすめします。
申請には領収証が必要ですので、必ず保管しておきましょう。
参考元:厚生労働省
受診・入院の際の交通費はメモを
最後にご紹介するのは交通費です。
介護が必要な高齢者の多くは主治医に定期的に受診をして薬をもらっています。
意外と感じるかもしれませんが、その時の交通費は医療費控除の対象となるのです。
ただし、医療費控除の対象となる費用は原則公共交通機関に限られており、自家用車で通院した場合のコスト(ガソリン代、駐車場代等)は対象とならないため注意が必要です。
バスなどの公共交通機関は領収証の発行がないため、通院日やバスを使用した期間を別紙でまとめて提出、医療費の領収証などと日時を照らし合わせる事で医療費控除の対象に含めてくれます。
ひと手間ですが、別紙にメモをしておくようにしてください。
参考元:国税庁
申請しなければ戻る事はありません
医療費控除は申請しなければ戻る事がないお金です。
忘れずに申請を行い、還付を受けるようにしましょう。
書類の作成方法が分からず申請をしない方も多いと聞きますが、税務署に行くととても親切に教えてもらえます。
利用せざるを得ない介護・医療の中でもお得になる事項があれば、1度丁寧に向き合ってみませんか。(執筆者:老人ホーム施設長 佐々木 政子)