収益用不動産をたくさん持っていると家賃収入を多く得られるので、うらやましいと思っている方も多いと思います。
しかし不動産投資では、購入時、保有期間中、売却時とそれぞれのステージでさまざまな税金がかかるので、皆さんが思っているよりも手元にお金は残りません。
不動産投資は税金との戦いとも言われており、いかに節税するかも不動産投資においては重要だと言えます。
今回は、不動産投資を始める前に知っておきたい税金についてお話しいたします。
目次
購入時にかかる税金

まずは、収益不動産を購入する際にかかる税金についてお話しいたします。
購入時には、
・ 登録免許税
・ 不動産取得税
が必要です。
なお、購入ではなく譲渡や相続の場合には、
・ 相続税
がかかります。
印紙税
印紙税は、不動産売買契約書など書類に課せられる税金です。
他にも、物件を土地から購入して建築する場合には、建築の請負契約書や金額の入った覚書、領収書などにもかかります。
契約する金額や領収する金額によって税額が異なります。
登録免許税
登録免許税は、売買、相続などによる所有権の移転、保存の登記、抵当権の設定登記、根抵当権の設定登記などの申請をする場合に課せられる税金です。
一般的には登記は、司法書士に依頼するので、登録免許税の計算は司法書士がしてくれます。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物などの不動産を取得した際に課せられる税金です。
購入後しばらくすると各都道府県の自治体より納税通知書が送られてきます。
不動産取得税の計算方法は、
ですが、2021年3月31日までは、特例により以下のとおり標準税率が軽減されます。
・ 住宅以外の家屋: 4%
軽減制度
なお、不動産取得税には以下のような軽減制度があります。
・ 新築住宅及びその敷地の税額の軽減
・ 認定長期優良住宅の税額の軽減
・ 中古住宅及びその敷地の税額の軽減
消費税
その他の税金としては、売主が課税業者の場合は、建物価格に消費税がかかります。
運営時にかかる税金

運営時にかかる税金は、
・ 土地・建物を所有することで必要な固定資産税・都市計画税
です。
所得税
家賃収入に対して所得税と住民税がかかります。
所得税の計算方法としては、まず、
を計算し、所得に応じた税率を支払います。
給与所得がある場合には、
となりますので、不動産所得に対して確定申告を行って税金を納めます。
収入に入るもの
年間収入には、家賃の他に、
・ 更新料
・ 管理費
・ 駐車場
・ 携帯電話などのアンテナ基地設置料金
・ 自販機の設置による収入
などが入ります。
必要経費に入るもの
必要経費は、
・ 損害保険料
・ 減価償却費
・ 修繕費
・ 管理委託費
・ ローン金利
などがあります。
ローン返済のうち元本返済は経費計上できませんのでご注意ください。
住民税
住民税については、家賃収入で所得が増える分住民税も増えるという点で今回紹介しております。
固定資産税
固定資産税は、その年の1月1日にその不動産の所有者へ課せられる税金です。
市町村などの地方自治体に対して支払う税です。
課税額は、
で計算されます。
ただし、市町村によって異なる税率が設定されている場合があり、住宅用地の特例などもあるので各自治体に確認が必要です。
都市計画税
都市計画税は、市街化区域内の土地や家屋に対して課される税です。
課税額は、
で計算され、固定資産税と同様に市町村独自の軽減制度などをとっている場合もあるのでこちらも各自治体の確認が必要です。
売却時にかかる税金

不動産投資のもうけが確定するのは売却時です。
それまで家賃収入でいくら運用益が出ていても、売却価格が大きく下がるとトータルでマイナスということもあります。
逆に、収益物件の場合、周辺の開発が進んで地価が上がったり、リフォームなどでうまく家賃を上げることができれば、購入当初よりも高い価格で売却できます。
譲渡所得税
売却時に利益(譲渡益)が出ると、譲渡所得税を課せられます。
譲渡所得税は、
ここから特別控除額を引いて課税譲渡所得を計算します。
これは、給与所得とは合算できず分離課税となっており、所有期間によって税率が変わります。
・ 5年超の長期譲渡:譲渡税20.315%(所得税15.315%・住民税 5%)
となっています。
ここでいう所有期間5年というのは、所有した年度より1月1日を5回経過するという意味ですのでご注意ください。
印紙税
他には、売買契約書に貼る印紙税も必要です。
節税を考えるよりもまずは利益を出すことを考える
不動産投資では、このように購入から売却まで多くの税金がかかりますので、節税をしたいと考える方も多いと思います。
しかし、不動産投資を成功させるためには、最初から節税を考えるのではなく、まずは利益を出して必要な税金をきちんと納めることが重要です。
出た利益は物件の購入やリフォームなどに再投資し、徐々に規模を増やしてさらに実績を上げることができれば、不動産賃貸業として銀行などの金融機関にも融資をしてもらうことも可能です。
目先の利益ではなく、将来も見据えた運営が不動産投資では重要だと言えます。(執筆者:山口 智也)