家族や配偶者など、自身の収入で生活を支えられている人がいる場合、自身が死亡や就労不能になってしまった場合への備えは最大の関心事です。
これらの保証を生命保険や医療保険などを利用して備えている方も多くいますが、民間の保険契約だけですべての保障を賄おうとすると多額の保険料が必要となってしまいます。
そのため、社会保険制度を保障の柱とし、不足部分を民間保険で補うのが一般的な方法となっています。
死亡・就労不能時に応じる社会保険として、遺族年金保険や健康保険の療養費・傷病手当金と労災保険によって備えることができます。
中でも労災保険は、近年政府が副業を推進していることから改正が検討されています。
今回は労災保険と副業の関係、死亡給付金の仕組みについて解説していきます。
目次
副業推進による変化について

労災保険は業務遂行中や通勤・帰宅時の事故によりケガなどを負ってしまった場合に療養費と支払われている賃金に応じて休業補償を受けることができる制度です。
しかし、現在の労災保険の休業補償は労災事故が生じた事業所で稼得していた賃金を基に休業補償の給付額を算出します。
そのため、賃金額の少ない副業先で労災事故に遭い本業・副業ともに休業した場合でも副業分の休業補償給付金しか受けることができず、労災事故発生時に補償額が不足する恐れがありました。
現行制度は副業や兼業を行っている複数就業者の収入や労働時間を正しく反映できていない問題があります。
しかし現在、制度改正により着実に複数就業の実態に即した労災保険制度に変化しつつあります。
事実、2019年12月23日に開かれた労働政策審議会において労災の認定基準となる労働時間が本業と副業を合算したもので判断されるよう2020年度中の制度変更を目指すこととなりました。
また複数就業者の収入を合算し休業給付金の額を算出しようとする議論も盛んに行われており、今後労災保険は複数就労を想定した制度に変化していくと予想されます。
ですから、労災保険制度について最新の動向をチェックしておくことをおすすめします。
労災保険の死亡・休業時の主な給付金について

労災保険による補償は、療養費が全額支給されるなど他の社会保険制度と比べて手厚くなっています。
以下に主な労災保険の給付金の種類について紹介します。
【休業の場合】
・ 休業特別支給金:休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%
【死亡の場合】
・ 遺族特別支給金:一律300万円
・ 遺族特別年金:遺族の人数に応じ、算定基礎日額の153日~245日分
※給付基礎日額:労災発生前の直前3か月の賃金を暦日数で割った1日あたりの賃金額
※算定基礎日額:労災発生前の1年間の賃金、賞与を合算し365日で割った1日あたりの賃金額
労災保険の制度改正をチェックしておこう

現在の労災保険は副業などを行う複数就業者を想定していないため、状況によっては十分な補償が得られない恐れがあります。
しかし、制度上の問題点が認識されはじめ制度改正に向けてさまざまな議論が始まりました。
来年度以降は労働時間が本業・副業で合算されるため、長時間労働による労災認定が行われやすくなります。
このように制度そのものが大きく変化しているので副業などを実施・検討している方は最新情報をチェックしておくことが大切です。
また保障内容も手厚いため、1人親方などの自営業者の方も特別加入を検討してみてはいかがでしょうか。(執筆者:菊原 浩司)