介護はいつ始まるかわかりません。
「自分の親はまだ若いから大丈夫」と思っていても、道で転び、足をケガして入院することもあります。
足が治り自分で身の回りのことができるようになるまでは人の手を借りる、つまり介護が必要になるのです。
介護は、短い期間でもそれなりのお金がかかります。
しかも、お金を払って介護が終わってから
ということがとても多いようです。
今回は、筆者の周囲で実際にあった「あのときの一言で得した」または「あのとき何も言わなかったから損した」というエピソードをもとに「得する一言」を紹介します。
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目次
「個室は希望していません」の一言で差額ベッド代が得に
筆者の友人の親が、ある日腹痛を訴えて入院することになりました。
緊急手術が必要なほど大きな病気だったので、入院も長期になることは予測できました。
一般的に医療費は長期になればなるほどかさみます。
しかし友人は、例え入院が長期になっても、健康保険や高額医療費制度を使えば、さほど負担にならないだろうと考えていたのです。
手術も無事に終わり、友人が入院の手続きをしていると、病院の事務担当者がやってきて
と言いました。
友人は「差額ベッド代は高額医療費制度の対象外」ということは知っていました。
つまり、1日1万円はそのまま自己負担になり、月に約30万円を支払うことになるのです。
友人は「月30万円は支払えない」と思いつつも、手術直後の親を連れて帰るわけにもいかず、書類にサインをしました。
友人は、帰宅後すぐに介護関係の仕事をしている妹に相談をしました。
すると妹はすぐにサインを促した事務担当者に電話をして、きっぱりと「個室は希望していません」と伝えたのです。
すると、すぐに事務担当者から友人に電話がきて「個室の差額は支払わなくてかまいません」と言われました。
実は、個室の差額ベッド代は「入院する側が個室を希望した場合に支払う義務が発生」します。
今回の場合は、「満室」という病院側の都合で個室に入るため、支払う義務はありません。
しかし、友人は病院側の説明を受けて個室に入る書類にサインをしてしまいました。
病院によっては、書類にサインをしてしまうと「個室の差額ベッド代支払いの了承を得た」ということになり、あとから何を言っても聞き入れてもらえない可能性もあります。
書類にサインをするときには、しっかりと内容を確認し、不明点があるときには知識のある人に相談をしてから納得の上でサインをするようにしましょう。
また、差額ベッド代について医師や看護師にクレームを言ったり、相談したりする人がいますが、料金についての相談は事務担当者と行います。
「これを買って飲んでいます」の一言で薬代が得に
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友人の親が大きな病気になりました。
友人は「いいもの」と聞けばどこにでも行っていました。
そのうち、イギリスでみつけた栄養剤をとても気に入り、定期的に渡英して購入していました。
渡英費用と購入代金は、かなりの金額になっていたはずです。
ある日、友人が親の受診に立ち会ったとき、医師に「実はこれを買って飲んでいます」と話をしました。
すると、医師は「これに似たものが日本にもあります。合っているならば処方箋を書きますよ。」と言ってくださいました。
友人がイギリスでみつけたものは漢方薬の一種でしたが、日本にも似たようなものがあり、処方箋をもらって購入することで保険が適用されます。
「これを買って飲んでいます」の一言で、イギリスまでの渡航費も購入代金も節約することができました。
医師に「これを買って飲んでいます」と伝えることは、余計な医療費を節約する意味でも効果的です。
医師が的確に薬を処方しても、独自に買って飲んでいる薬の成分と相性が悪ければ効果が十分に発揮できないこともあります。
患者側としては「医師が処方した薬以外に飲んでいるものがある」ということは、医師に対して失礼なことのような気がします。
しかし医師は効率的な治療をするためにも「正直に話してほしいと思っている」と本で読みました。
効率的な治療のためにも、薬代節約のためにも「これを買って飲んでいます」の一言は大切な言葉ではないでしょうか。
「これはできます」の一言で介護費用がお得に
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介護保険のサービスを受けるためには、介護区分の認定を受ける必要があります。
区分は要介護5まであり、一般的に介護区分が高ければ高いほど受けられる支援限度額は高くなります。
そのため、区分が判定されるときに「あれもできない」、「これもできない」とできないことをオーバーに伝えてしまう人がいるようです。
たしかに介護区分が高くなれば受けられるサービスは多くなります。
しかし、介護区分が高くなればなるほど、自己負担額も上がるのです。
例えば、デイサービスを受けるときの自己負担額は、要介護1の人と要介護3の人とでは約200円の差があります。
介護保険で受けられるサービスはたくさんありますが、そのすべてを限度額まで使い切ることは、それはそれで難しいことです。
判定を高くするために「これもできません」というよりも、「これはできます」の一言で正しく判定を受け、本当に必要な負担額を支払う方が得することもあります。
支払ってしまったお金については「あのとき言っておけばよかった」と思っても、後戻りすることが難しいケースがほとんどです。
お金を支払う前にしっかりと知識を身に着けて、時と場合に応じた一言で余計な出費を防ぎましょう。(執筆者:式部 順子)