先日発表された「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では、国民に対して「発熱等の風邪症状が見られる場合の休暇取得、外出の自粛等」を呼びかけています。
参照元:厚生労働省
また、企業に対しても「発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇取得の勧奨」を強力に呼びかけるとしています。
しかしながら、今回の新型コロナウイルスに関しては潜伏期間が長いと言われていて、「疑い」がある場合の自主休業期間の目安は14日、約半月もあります。
そうなると、心配になってくるのは生活費です。
今回のような「感染症予防のための休業」で働けなかった場合に、休業手当は出るのでしょうか。
想定されるケースごとに、詳しく説明します。

目次
休業手当とは
休業手当とは、労働基準法に基づく「使用者の責に帰すべき事由により休業した場合に、労働者に支払われる手当」です。
つまり、労働者側には理由がないのに会社側の都合で休業させられた場合に、休業期間の給与を60%まで支払ってもらえる制度です。
では、厚生労働省からの発表を元に、次の症状が支払い事由に該当するか見ていきましょう。
実際に、新型コロナウイルスに感染してしまった場合
新型コロナウイルスに限らず、感染症によって労働者が休む場合は、一般的に「会社側の都合での休業」とは言えません。
ただし、以下の条件を満たした場合には、傷病手当金が支給されます。
傷病手当金
健康保険法に基づき、「疾病や負傷により業務につくことができない場合の給付金」で、休業4日目から最大1年半まで、平均給与の60%が支払われます。
【支払い条件】
被用者保険(健康保険・共済組合・船員保険などに加入している)であり、以下の4点を全て満たすことが支払い条件です。
(2) 仕事に就くことができない状態である
(3) 連続する3日間を含み、4日以上就労できなかった
(4) 休業中に給与の支払いがない
もちろん、新型コロナウイルス以外でもインフルエンザ感染や肺炎、その他病気などで休業することになった場合にも、上記条件を満たせば傷病手当金の対象です。
インフルエンザで4日以上欠勤なら「傷病手当金」を受給できる 制度内容と条件を解説
発熱や風邪症状など「感染の疑い」があるため「自主的に休んだ」場合

「自主的な判断での休業」は一般的な病欠と同じ扱いになり、休業手当の支払い事由とはなりません。
厚生労働省も、
新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休まれる場合は、休業手当の支払いの対象とはなりません。この場合には、事業場に任意で設けられる有給の病気休暇制度があれば、事業場の就業規則などの規定を確認いただき、これを活用することなどが考えられます。
引用元:厚生労働省
と名言しています。
発熱や風邪症状など「感染の疑い」があるため、「会社から休むよう言われた」場合
例えば、「熱が37.5度あった際には休むように」など、会社が自主的に定めた基準によって、一律に休ませる場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまるとされています。
参照元:厚生労働省 企業向けQ&A
ただし、客観的に判断しても体調が悪いなどで「職務継続が困難」と思われる状態だった場合には、会社からの勧告で休業しても、支払い対象にはなりません。
つまり、
ということです。
一般的には、
です。
新型コロナウイルス感染症により、事業の休止に伴う休業

今回の新型コロナウイルス感染症によって、事業の休止を余儀なくされ、労働者を休業させざるを得ない場合は、どうなるのでしょうか。
「会社の都合により労働者を休ませた場合」には、休業手当の支払い対象です。
「不可抗力で休業せざるを得なかった場合」には、会社に休業手当の支払い義務はありません。
「不可抗力だったのかどうか」は、
・ 休業回避のための具体的努力を行ったのかどうか
など、さまざまな観点から総合的に判断する必要があると厚生労働省が述べています。
労働者側としては、休業前の状況や「どのように休業を言い渡されたのか」を記録しておくとよいでしょう。
参照元:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(pdf)」
実質休業中でも、企業から給与が出ている場合
企業によっては、「給与ありの休暇(あるいは時短勤務)」を付与しているところもあります。
休業手当は「就業不能期間の生活費補填」が目的の制度ですから、給与が支払われている場合にはもちろん対象外です。
企業が独自に制定した「休暇」もある
休業手当や傷病手当金の他にも、企業が任意で設けた「休暇」を取得できる場合もあります。
それぞれの勤め先に休暇の有無や、対処法を確認しておくのも、もしもの場合の予防策のひとつと言えるでしょう。
また、デマに惑わされないことも大切です。
正しい情報を入手しましょう。(執筆者:仲村 希)