世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大していますが、ドル円相場はレンジ往来を維持し、円高に振れることはありませんでした。
今回は、その理由と今後の見通しについて解説します。
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年初から「レンジ往来の動き」のドル円相場

日本円と米国ドルの為替レートは、2月中旬までは1ドル = 108円~110円程度の狭いレンジで推移してきました。
1月下旬から新型コロナウイルスの感染者数が急増し、世界的に景気に与える悪影響が懸念される状況下でも、円高に振れることはありませんでした。
これまで、何かリスク要因が顕在化した場合、比較的安全資産とされる日本円は買われる傾向にありましたが、ここのところそのような動きは見られず、横ばい圏内で推移していました。
この要因には、
ということが挙げられます。
また、これまで金利の低い円は、金利の低い通貨を売って得た資金で高金利通貨へ投資するキャリートレードの主要な対象になっていましたが、
のも一因でしょう。
追加緩和策が限られる日本銀行

3月3日に、G7の財務相・中央銀行総裁が緊急の電話会議を開いて、新型コロナウイルスが及ぼす経済への下振れリスクに対し「あらゆる適切な政策手段を用いる」と表明し、各国が連携して財政政策、金融政策両面で経済を下支えする姿勢を鮮明にしました。
また、米国では早速これを受けて、リーマンショック直後以来の緊急利下げ(50ベーシスポイント)を実施しました。
日本も3月2日に、「適切な金融市場調節や資産買い入れを通じて潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努める」という談話を発表し、臨時で5,000億円の資金供給を実施しました。
もっとも、主要中央銀行が連携して緩和的な金融政策をとるといっても、日本はこれまでに打てる策はほぼすべて打ってきており、追加で対応措置をとるにも限界まできている感が否めません。
そのため、
ことも想定されます。
縮む日本と米国の金利差
3月3日の米国の緊急利下げを受けて、米国の長期金利は過去最低を更新し、1%を割る水準にまで低下しています。
短期的な為替レートの決定要因は、一般的に2国間の金利差と言われており、新たにとれる金融緩和手段が少ない日本の金利は低下しにくい一方で、利下げなど緩和手段を持つ米国の金利は低下していくことが考えられます。
その結果、日米の金利差は縮小していき、それをきっかけとしてドル円の為替レートが円高方向に動きだすことが考えられるでしょう。(執筆者:土井 良宣)