近年不動産価格が高騰しているため、マイホーム購入に踏み出せない人もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産価格高騰の要因は、日本銀行による金融緩和と、オリンピック需要による人手不足・資材不足によるものです。
そのため新築物件だけではなく、中古物件を検討されている人もいらっしゃることでしょう。
しかし中古物件の購入には、いくつか注意しなければならない点があります。
今回は中古物件を購入する際の注意点を明確にし、新築物件との違いについてお伝えしていきます。
目次
中古住宅の注意点
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中古物件は新築物件に比べ物件価格が安いことが多いですが、購入時も購入後もさまざまな点で違いがあります。
中古住宅を購入する際に注意しなければならないことを明確にしていきましょう。
1. 新築よりも維持費や修繕コストが高い傾向に
新築物件に比べ中古物件は築年数が古いため、物件の状態によっては早期にリフォームやメンテナンスが必要になる可能性があります。
その他にも中古物件は設備が古く、省エネに対応していないため光熱費が高くなることもあるのです。
またマンションの場合は、共有部分や屋上、外壁などを定期的に修繕するために修繕積立金を払わなければなりません。
新築物件や築浅の物件では比較的安く設定されていることが多いですが、築10年以上の物件では修繕箇所が増えるため、修繕積立金が高くなる傾向があるのです。
2. ローンの審査が厳しい
新築物件に比べ中古物件はローンの審査が厳しいといわれます。
なぜならば中古物件の購入でローンを組む際、担保となる住宅の資産価値が新築物件に比べ低くなることが多いからです。
融資を行う金融機関などは、債務者が住宅ローンが返済不可能な状態に備えて、担保となる資産(多くの場合住宅)に抵当権を設定します。
債務者が住宅ローンを返済できなくなると、債権者である金融機関などは抵当権を行使し、担保を処分して貸付金を回収できるようにします。
特に旧耐震基準(1981年5月31日以前に建てられた物件)の場合は、資産価値が低くなることが多いです。
担保となる資産価値が低くなるため、希望の金額を借入れできなくなる可能性があります。
3. 固定資産税の優遇が少ない
住宅を購入するとさまざまな維持費が発生しますが、その中でも固定資産税は大きな負担となります。
新築物件の場合は、家屋に対する固定資産税が3~5年の間、50%に軽減される優遇制度がありますが、中古物件にはこのような優遇制度がありません。
・ 新築物件:3~5年(条件により変動)は固定資産税が半額
・ 中古物件:適用無し
中古物件を購入すると1年目から固定資産税の全額を支払う必要があり、家計にとって大きな負担となるのです。
4. 欠陥保証の期間が短い
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住宅は人生で最も高い買い物といわれ、高額な買い物であるが故、欠陥についてはしっかり保証を受けたいところでしょう。
そのため新築物件では、「構造上主要な部分」や「雨漏りを防ぐ部分」に重大な欠陥があると、法律上、10年は売主が修理する責任を負うことになっています。
中古物件の場合も、新築物件同様に欠陥保証を受けられますが、その期間が最低2年と短めに設定されています。
また同じ中古物件でも、契約時の保証内容によりますが、個人が売主の場合は、売主が全く責任を負わないこともあるのです。
・ 新築物件:10年
・ 不動産会社が売主の中古物件:2年
・ 個人が売主の中古物件:ケースによる
中古住宅を購入前に建物状況調査を行っておくといいでしょう。
5. 売主が個人の場合は住宅ローン控除が少ない
住宅ローン控除とは住宅ローンを組んだ時、ローン残高の1%について一定期間税額控除を受けられる制度です。
2019年10月の消費税増税対策として、税額控除できる期間が本来の10年から13年に延長されました。
ところが中古物件でも個人が売主の場合は、控除される金額が少なくなります。
・ 新築物件:上限年40万円、最長10年(2020年年末までは13年)
・ 不動産会社が売主の中古物件:新築物件同様
・ 個人が売主の中古物件:上限年20万円、最長10年
同じ中古でも売主によって違いがあるため注意が必要です。
2021年からリフォーム向け融資の優遇対象が広がる
ここまで見てみると、中古物件は新築に比べデメリットが多いように感じますが、近年風向きも変わってきています。
国土交通省と住宅金融支援機構が、中古住宅の流通に向け、2021年からリフォーム向け融資の優遇対象を広げることを発表したのです。
耐震性やバリアフリー、断熱性の向上などで一定の要件を満たせば、低い金利で融資が受けられます。
具体的な施策内容は、長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」でローンを組む際、リフォーム費用が200万円以上となれば、借入期間が5年間にわたって0.5%下げられます。
現在でも同じような優遇金利の仕組みはありますが、リフォームによって耐震性などを新築住宅並みに上げる必要がありました。
しかし今回の発表で、適用条件が緩和されることになります。
中古物件を購入し、リノベーションを検討されている方にとって、ぜひとも活用したい制度ではないでしょうか。(執筆者:FP2級 福森 俊希)