経済発展や年金制度への不安が高まり、将来資金の準備として預金よりも運用へと関心が移ってきています。
iDeCoやNISAといった個人投資家のための税制優遇制度も広く知られるようになり、両制度の利用者数は年々増加傾向にあります。
今回の記事ではiDeCoと一般NISA、つみたてNISAをそれぞれ経験した筆者の感想を元に、各制度に向いているケースについて考察します。

目次
一般NISAとつみたてNISAは二者択一
2014年にスタートした少額投資非課税制度「NISA(一般NISA)」は、毎年120万円までの枠で買い付けた投資商品について、以降5年間にわたり配当や譲渡益などの投資利益が非課税になる制度です。
対してつみたてNISAは毎年の非課税投資枠が40万円で、非課税期間が20年間となっています。
平たく言うと一般NISAは高額で短期売買向け、つみたてNISAは少額で長期投資に向いた内容となっています。
また、一般NISAとつみたてNISAは切り替え可能ですが、同じ年の中で切り替える事や併用する事はできません。
状況に合わせて一般NISAとつみたてNISAを年毎に切り替えも可能です。
毎回の手続きや管理の問題もありますので、基本的にはどちらかの制度を選んで使い続ける事が多いと思われます。
どちらの制度も経験した筆者の感想では、どちらもメリット、デメリットがあるものの、つみたてNISAの方が使いやすい制度だと感じています。
一般NISAの良かった点、悪かった点
まず一般NISAの良い点としては、年間投資枠が120万円と大きい所と、選べる商品の範囲が広い事が挙げられます。
つみたてNISAやiDeCoでは個別株式を扱っていないので、株式を購入したい場合は一般NISAを選ぶか、通常の投資口座で買い付けるしかありません。
デメリットは非課税期間が5年と短いことにあり、老後資金準備などの長期的な資産形成を考えている人には向いていません。
実際に使ってみて最も強くデメリットに感じたのはこの非課税期間の短さで、5年間の中で最も利益が最大になりそうな時点で売却するというのは初心者には難しいものです。
投資未経験者が最初に使う制度としては少しハードルが高いと考えられます。
一般NISAは短期売買に慣れている人や株式を購入したい人、そして現在既に投資に回せる余剰資金が十分にあり、近い将来大きな出費を伴うライフイベントがない人にオススメです。

つみたてNISAの良かった点、悪かった点
つみたてNISAの良い点は主に商品が長期投資向けのものに限られている所と、非課税期間が長い所です。
そのため長期的な老後資産形成と相性の良い制度となっています。
初めて投資を行う場合商品選びが非常にネックとなりますが、つみたてNISAで選べる商品は信頼性、安全性が比較的高い投資信託に限られているので、初心者にもやさしい仕組みになっています。
選ばれている商品をランキング形式で見て選んだり、勝手に分散投資してくれるバランス型などもあり、商品選びにあまり時間をかけずに済みました。
また、非課税期間が長いので基本的にほったからかしで良く、いつ売るかハラハラしながらチェックする必要がないのも良いポイントです。
一方悪い点としては金額が少額である事で、退職金などで今すでに手元に余裕資金が多くある方や、20年も待つことができず短期的にお金を増やしたいという目的がある方にはオススメできません。
iDeCoは手数料と手続きの面倒さが気になるが、所得控除は魅力的
iDeCoについてはまず始める時の手続きが面倒という印象が大きかったです。
会社の人事にも書類を作成してもらわなければいけませんし、提出してからも2か月程度待つ必要があります。
また、加入時や受取時、移管時、運用中にかかるiDeCo特有の手数料も気になるポイントです。
金融機関によってこれらの手数料が異なるので、始める時には手数料の低い金融機関を選ぶように注意が必要です。
商品の種類が長期資産形成に向いているものに限られている点については、良い点でもありますが、正直なところ種類が少なすぎるという印象を受けました。
あまり選択肢がないので大きな失敗はしないと思われますが、一方で選ぶ楽しみや効率的に資産が増えているという実感は持ちにくいところがあります。
また、60歳まで原則引き出しできない点も大きなデメリットであり、掛金を大きくしすぎると生活が圧迫されるリスクがあるため、絶対に60歳までの間には使わない余剰資金だけを掛ける必要があります。
一方で、掛金の所得控除は非常に魅力的で、所得が多い人ほどその恩恵が強く感じられるはずです。
実際に年末調整でiDeCoの所得控除分が返ってきたときは、給料が増えたようにうれしく感じました。
専業主婦など所得がない場合はこの所得控除の意味がなくなるため、iDeCoよりもつみたてNISAで運用した方が効率的です。
iDeCoが向いているのは現在一定の収入と老後まで確実に使わない余剰資金があり、気長に運用していけるタイプの人に限られるでしょう。
増えるかどうかは選ぶ商品次第
資産を増やすには3つの制度のどれが良いか、という観点では、一概には言えない部分があります。
商品の安全性としてはiDeCoが最も高く、次につみたてNISA、最後に一般NISAです。
逆に言えばiDeCoが最も増えにくく、つみたてNISA、一般NISAの順にリターンの期待度が高くなります。
短期的に大きなリターンが欲しい人は一般NISA、長期的な視点で資産形成したい人はつみたてNISA、所得控除の恩恵を受けながらじっくり増やしていきたい人はiDeCoといったイメージです。
しかし結局は資産の増え方は選んだ商品の内容や組み合わせによるので、どの制度を使ったから良いという事でもありません。
自分の目的に合った性質の商品を選ぶ事が重要です。

これからの人はつみたてNISAとiDeCoの併用がオススメ
資産運用をこれから始める、という場合にはつみたてNISAから始めてみる事をオススメします。
一般NISAは商品の種類が豊富すぎる点や短期売買が必要など、初心者向けではない制度である上に、口座の新規開設が2023年を持って終了する予定となっています。
まずはつみたてNISAを始めてみて商品選びや運用に慣れていくことからスタートすると、たとえ失敗したとしても大きな痛手にはなりません。
その上でさらなる余剰資金がある場合に限っては、iDeCoも併用していくことで、節税と資産形成の効果を高める事ができます。
自分に合った方法を見つけよう
金利の低い現代では、預金よりも運用によって資産を形成していく方が効率的です。
政府も個人の資産形成を促すためにNISAなどの税制優遇制度を作っているので、各制度の内容をよく調べて自分に合った方法を見つけていく事が大切です。(執筆者:島村 妃奈)