3月に入って、日本のみならず世界中の株式相場が乱高下を繰り返しながら急下落しています。
新型コロナ感染が欧州にも飛び火し、パンデミックが宣言される中、史上まれにみる大相場となっています。
3/16にはNYダウが約3,000ドル下落し、史上最大の下げを演じました。
こうなるとPBR1.0倍やPER11倍が下値、というようなテクニカル分析が役に立たなくなります。
いつ・どこで株価が底を打つのかを言い当てることは難しいのですが、その中でも大注目の指標があります。
市場参加者の予想変動率を表す「VIX指数」がそれで、この指標がある程度低下しないと、高値安値の妥当な価格も算出できないのです。
ここでは今の日本が置かれている環境を整理し、VIX指数を使った投資タイミングの計る手法をご紹介します。

目次
「 VIX指数」40以下が1つのタイミングである理由
ここまで変動幅(ボラティリティ)が毎日大きい株式相場も、そうそう訪れない大相場にあり、唯一投資タイミングを計る目安は、「他人がどう行動するか」を良く見ることです。
過去のデータやPBRなどのテクニカル分析も主要な判断材料とはならない大相場では、「株価の不安定さ、変わりやすさ=ボラティリティ」を現す指標であるVIX指数が投資判断に有効となります。
世界のお金は、今どう動いているのか
いま世界の投資資金は、何に投資されていると思いますか。
通常の投資環境であれば、株が下がると債券が買われ、金も買われるセオリーがあります。
しかし今は株・債券・金など、全ての投資クラスが下落しているのです。
要は1番安全なキャッシュ(現金)に換金する動きが、世界中で起きています。
企業でも設備投資や積極的な買収などより、債務返済が増え財務体質の改善を優先しています。
世界の金融政策を見ると、各中央銀行が金融緩和策を発表し資金をジャブジャブにしているのですが、あくまでも市場の動揺や変動幅を低下させる意図があるだけです。
今のところ金融政策だけで動揺が収まるはずもなく、米国FRBおよび日本の日銀が緊急会合で発表した金融政策も空しく、発表後に日経平均は前日比約500円、米国NYダウに至っては約3,000ドルの史上最大の下落で終わりました。
欧米に広がった入国制限やイタリア・スペインの非常事態宣伝による外出禁止令など、経済への影響度が図れない新型コロナ感染が終息するまでは、どこが株価の底値なのかを言い当てることは難しい状況です。
前回SARSの時よりも中国の地位が著しく向上していたため、2002年当時の株価下落水準(直近最高値から▲17%)を下抜けし、株価の乱高下幅はリーマンショック時を越えてきました。
3/16に緊急開催されたG7首脳会議をへて、経済財政政策(補正予算実施)で不況が直撃している個人・法人へのピンポイントでの資金供給が期待されるところです。
日本株式相場を襲う4つの連鎖的危機
では今の日本を襲っている4つの連鎖的危機について、ご説明しましょう。
・ 新型コロナショック
・ 原油価格の急落
・ 円高進行
昨年10月の消費増税による悪影響が最小限に留まるかと期待され、今年1月は株式相場も上昇に転じていました。
中国を発生源とした新型コロナショックはWHOによるパンデミック宣言となり、アジアから欧米に中心地が波及してしまいました。
この経済活動の停滞を見て、原油価格が下落しました。
それを止めるためにOPEC(石油輸出国機構)からロシアに減産を提案したら、ロシアが拒否、原油価格は昨年末より50%超落ち込み、株式相場の下落に拍車をかけました。
また米国の利下げもあり、円高が進行。日本の輸出企業には、4つの連鎖的危機が重なりました。
経済および株式相場は、日本だけでそうすることもできず、東京オリンピック開催の是非についても、日本が望むだけでは実現できそうもない事態に発展しています。
日本の株式相場で売り手は海外投資家、そこに個人・事業会社(自己株買い)・日銀のETF購入が買い手として立ち向かっていますが、売り手の勢いはとても強く、太刀打ちできない状況がもうしばらく続きそうです。
VIX指数40以下が1つのタイミング

そんな先が見えない相場の中で、投資タイミングを計る指数の1つがVIX指数です。
VIXとは「ボラティリティ・インデックス(Volatility IndeX)」の略で、米国S&P500に対する将来の株価を予想して取引するオプション価格の値動きを指数として表しています。
将来の株価が大きく上がる(または下がる)と思えば、希望する株価を予約して取引する権利(オプション)も値上がりするのです。
しかし株価があまり上下しない相場であれば、予約して取引する権利は低い価格で取引されるのです。
このオプション取引の値動きから算出された「株式相場の予想変動率」が、VIX指数となります。
ここでは算出方法より、このVIX指数が今回のような大相場の時には投資タイミングの目安になることをご理解ください。
このVIX指数は、通常の相場では20以下となります。
しかし株式相場が乱高下した過去のショック相場では、こんなに高騰するのです。

VIX指数は別名「恐怖指数」とも呼ばれ、投資家が株価乱高下を予想する時に高騰します。
この指数が今のように高止まりしている間は、1日の中でも1,000円上がったり1,000円下がったりのジェットコースター相場になるのです。
そこでVIX指数を使えば、株価の底値を言い当てることはできなくても、底値付近が発見できるため、投資タイミングが分かります。
PBRやPER分析に頼る必要はありません。投資初心者にもできる投資手法です。
その手法とは、「VIX指数が40以下に下がるまで待つ」ことです。
VIX指数80を越えることなんて、10年に1回あるかないかの状況です。
その中で安値を探っていても、1番底や2番底の「わな(トラップ)」にひっかかるだけです。
それよりも底値から多少なりとも上昇した辺りで買う手法であれば、底値でなくても十分投資利益は得られるはずです。
VIX指数で言うと、ちょっとした乱高下相場の時に達する「40以下」の水準で投資することをおすすめします。
VIX指数は、日経平均比較チャートから確認してください。
不安定な相場だからこそ、成長分野で夢を買う

では相場が底入れし、投資を開始しようとした時にどんな銘柄を買えば良いのでしょうか。
今後の成長分野、言い換えれば株価が高くなる期待が大きい分野の銘柄がおすすめです。
5G関連企業
今年から日本でも解禁となった5Gサービスは、以前から注目されていましたが既に株価が高騰していたため、おすすめできない水準でした。
そこで積層CCで世界シェア1位の村田製作所(6981)、スマート工場向け需要が見込めるセキュリティ企業トレンドマイクロ(4704)など、既に5G銘柄として値上がりしていた銘柄も買いやすくなっています。
生産性向上に関わる企業
金融機関を始めとしたデジタル化への大転換やクラウド移行などに対応するNEC(6701)、ドローンを活用したインフラ点検作業を引き受けるMSOL(7301)なども注目です。
相場の格言では「落ちてくるナイフを拾うな」と言われ、どこまで落ちるか分からない環境で投資を始めない方が良いというものがあります。
株価が下げ止まり、底だと思ったら1番底で、さらに下落が始まることが今回もありました。
慎重に、けれども安値で買うタイミングは、周りより一足遅いぐらいがベターです。
まだ予断を許さない状況が続きますが、V字回復を期待して底値を探りましょう。(執筆者:中野 徹)