不動産投資に興味をお持ちの方はご存じだと思いますが、サブリースという言葉が新聞やメディアで取り上げられる機会が増えています。
2019年に「かぼちゃの馬車のシェアハウス投資事件」において、サブリースが悪用され大きなニュースとなりました。
そのため、「サブリース = 悪」という印象をお持ちの方も多いと思います。
先日も、ARUHIを舞台にした不動産投資向けの融資に対する審査資料改ざん事件がありましたが、そこでもサブリースが悪用されていました。
本来は非常に有益な手段であるサブリースですが、仕組みを知らずに契約するのは危険です。
目次
サブリースの仕組み

サブリースは、一括借り上げとも言われています。
仕組みは、オーナーとサブリース会社がマスターリース契約を行い、サブリース会社は相場家賃の8割~9割で一括借り上げします。
サブリース会社は、借りた部屋を保証家賃よりも高い家賃で転貸(サブリース)して収益を上げるわけですが、賃貸管理などもすべて面倒を見てくれます。
オーナー側には、
というメリットがあります。
特に、サラリーマンが副業として行う場合は、通帳にお金が入ってくるのを確認する程度で済むので利用する人も多いのです。
サブリースに潜むリスク
オーナーにメリットも多いサブリースなのですが、仕組みを知らないと大きなリスクを負うことになります。
サブリースの仕組みで最も知っておかななければならないのが、オーナーとサブリース会社はマスターリース契約(普通の賃貸借契約)を結んでいるため、
ということです。
サブリース会社は、借地借家法で守られることを盾にして、自社に有利な契約を結んでいるケースが多いのです。
リスク1. 貸主からの解約が難しい
サブリースのリスクの1つは、解約です。
借地借家法では、貸主は正当な事由がない限り、貸主側から解約を申し出ても解約するのが難しい状況にあります。
・ 建物が倒壊する恐れがある
・ 自分が住むので退去して欲しい
といったケースがありますが、普通に貸せている状況だと正当事由に当たらないケースが多いからです。
それを悪用して、「中途解約の場合には6か月分の保証家賃を支払わないといけない」など、高額な違約金を設定しているケースもあります。
リスク2. 賃料の減額を要求される
次に、2年に1度家賃を見直すといった条項を入れているケースです。
契約書に小さい字で書かれているので気付かないことも多く、
ことになります。
また、いくら30年同額家賃で一括借り上げしますと契約書に書かれていても、借地借家法で経済的な問題などがあれば借主側から家賃の減額を要望することは可能なのです。
オーナーにはローンの支払いがあるので、サブリース会社に減額と言われたらほとんどの場合に相手の要求を受けるしかありません。
突然解約と言われることも
最悪のケースは、家賃減額ではなく、
です。
貸主側には違約金などがありますが、借主側には正当な事由も必要ありません。
借主側の違約金などは設定されていないケースがほとんどなので、解約と言われてしまうと大変です。
解約と言われるケースでは運営がうまくいっていないことが多いので、「引き渡しを受けて入居を確認したら6室中2室しか入居者がいなかった」といったこともあり得ます。
サブリース契約する際には、最低でもこの2点についてはよく確かめておく必要があります。
サブリースが悪用された事例

冒頭でもお話したシェアハウス問題は、サブリースが完全に悪用されたケースです。
サブリースが悪用で多いのが、保証家賃の水増しです。
他の記事でも紹介していますが、収益物件の価格は家賃で決まります。
悪徳業者は、相場よりも高い価格で物件を買わせるために高い家賃でサブリースし、物件価格をつり上げて売却します。
のです。
シェアハウス問題では、土地・建物8,000万円程度の物件が、1憶5,000万円ほどで取引されていました。
というわけです。
シェアハウスを販売している会社は、この時点で大きなもうけを出すわけですが、このもうけを家賃保証の原資として、物件をドンドン売ることで自転車操業を行っていました。
実際には入居率は40%程度で資金が回らなくなり、同額家賃で30年一括借り上げする旨の覚書を交わしていたようですが、2018年11月頃から保証家賃の減額、2019年1月に支払い停止となりました。
市場価格よりも高い金額で買わされているので売るに売れず、ローンの支払いができずに自己破産する人も多く、自殺者も出ました。
現在、融資していたスルガ銀行が救援策を出していますが、普通であれば自己責任でアウトです。
サブリース会社の見極めが大事
私は、サブリースの仕組みは使い方次第では不動産賃貸に非常に有効な手段だと思っています。
しかし、契約する相手によっては非常に大きなリスクを抱えることになります。
サブリース契約する際には、相手方の会社の実績や資産背景などをきちんと調べること、購入する物件のサブリース賃料は適正なのか契約内容についてもきちんと確認しましょう。
サブリースだから安心ということを前面に押し出して物件を売ろうとする不動産業者は注意しましょう。(執筆者:山口 智也)