新年度を迎えるにあたり、転勤や就職・進学などで、さまざまな生活環境の変化が生じやすい季節です。
新たな環境で生活を始めるにあたって、電気・水道・ガスに新聞やインターネットなど多種多様の『契約』を結ぶ必要があります。
こうした契約が本人の意思に合致するものなら良いのですが、断り切れずつい契約してしまうということもあります。
こうした場合、契約者を保護する『クーリングオフ』がありますが、一定の条件下では利用できない場合もあります。
今回は、契約者保護のための重要な制度である「クーリングオフ」について解説していきます。
目次
クーリングオフの概要

クーリングオフは訪問販売などで予期せぬ勧誘を受け、十分な検討が行えずに契約をおこなってしまった場合、契約を再考し、不要であると考えれば無条件で契約を撤回することができる制度です。
クーリングオフの対象となる商品は、基本的には訪問販売や電話勧誘などによる物品売買となりますが、マルチ商法の勧誘や取引価格が5万円以上の特定継続役務提供という下記のような7種類のサービスも含まれます。
・ 美容医療
・ 語学教室
・ 家庭教師
・ 学習塾
・ パソコン教室
・ 結婚相談所
また、
・ 売主が宅建業者(個人間取引でない)などの特定の条件を満たした不動産売買契約
なども対象となります。
クーリングオフは、一般にイメージされるよりも幅広い分野で契約者を保護することができますので、解除したい契約がある場合はクーリングオフの利用を急ぎ検討してみることが大切です。
クーリングオフの行い方と注意点

クーリングオフの申込は必ず書面で行う必要があり、また、一定の期間内にクーリングオフを行わなければなりません。
クーリングオフを行える期間は基本的には8日間で、マルチ商法や内職商法などは20日間の期間が定められており、書面を発送した日付で効力を発揮します。
しかし、クーリングオフが行えない取引様態もあります。
例えば、
・ 取引金額が3,000円未満
の場合、店舗や自ら指定した自宅・職場で契約を結んでしまうとクーリングオフ対象の取引であっても利用することはできなくなってしまいます。
クーリングオフの対象外とならないためには、金額や申込場所には注意が必要です。
この他の注意点として、違約金や解除手数料といった名目で金品を要求される場合が散見されます。
クーリングオフを行った場合は、こうした金銭的負担なしで契約を解除することができるので、請求があっても支払う必要はありません。
適用外の取引様態を把握して損失回避
新生活の始まりは多くの契約・手続きを行う必要があり、また、思いもよらぬ勧誘・誘惑を受けることもあります。
クーリングオフは商品の売買のみならず保険契約や不動産売買にマルチ商法の申込などもカバーする優れた契約者保護制度ですが、適用外の取引様態もあり、必ずしも万能ではありません。
適用外となる取引様態を把握し、必要のない契約や意に沿わない契約を適切に処置できるようクーリングオフを上手に利用しましょう。(執筆者:菊原 浩司)