3月の初旬、ウイルス検査キットや医学実験に使われる試薬を提供している米国の企業サーモフィッシャーサイエンティフィック(以下サーモフィッシャー)が同業者のオランダの企業であるキアゲンを買収することを発表しました。
両社とも医療機器の分野の中では規模が大きいため注目するべきM&Aです。
また、サーモフィッシャーは米国S&P500に上場しており、人気のバンガードのETFであるVOOなどにおいても投資されています。
したがって、S&P500に投資しているETFを購入されているのであれば、把握しておいた方がよいでしょう。
そこで、この記事ではサーモフィッシャーによるキアゲンの買収とその将来性などについて解説します。
目次
サーモフィッシャーがキアゲンを買収

今年の3月に医療機器などを提供しているサーモフィッシャーが、遺伝子検査キットなどを提供しているキアゲンの買収手続きに入ることを発表しました。
買収規模は約115億ドル(日本円で約1.2兆円)です。
これを受けて、キアゲンの株は20.7%急騰しました。
両社の分野は近いのですが、提供するものなどがやや異なるため、この買収によりサーモフィッシャーは企業としてさらに成長する可能性があります。
以下で各々の企業について解説します。
サーモフィッシャーサイエンティフィックとは

売上高で比較すると、サーモフィッシャーはアメリカの医療・科学機器業界においては第2位です。
アメリカの代表的なインデックスであるS&P500のリストにも入っています。
同社の売り上げの半分は北米で、その他にはヨーロッパやアジアで売り上げを伸ばしています。
また、4つのセグメントがあり、売上高という点で主要セグメントは研究用製品およびサービスです。
サービスや製品の主な提供先は製薬・バイオテクノロジー企業です。
最近では、新型コロナウイルス(COVID-19)の検査キットやそのための機器を提供しています。
キアゲンとは

ドイツのフランクフルトにある上場企業ですが、本社はオランダにあります。
サーモフィッシャー同様に、主に製薬・バイオテクノロジー企業に研究試薬や機器を提供していますが、具体的な提供製品についてはサーモフィッシャーとはやや異なります。
例えば、組織や血液サンプルからDNAやRNAを抽出するためのキットや試薬についてはキアゲンの方が得意で、製薬・バイオテクノロジー企業のみならず大学などの世界中の基礎生物学研究が行われている研究室でも使われています。
やはり、同社も新型コロナウイルスの検査キットを提供しています。
今回の買収の話が公開されたことを受けて、キアゲンの株価は約20%急騰しました。
買収後は相乗効果が期待される
サーモフィッシャーは、
としています。
事実、先述したように、両社の製品やサービスの重複度合いはそれほど高くないため、買収による相乗効果が期待されます。
具体的には、サーモフィッシャーは、同社が持っていないキアゲンのサンプルからのDNAなどの抽出技術、実験自動化技術などを利用する一方で、キアゲンもサーモフィッシャーが持っている技術などを利用できます。
これにより、サーモフィッシャーは医療・科学機器業界でのシェアをさらに拡大していくことでしょう。(執筆者:小田 茂和)