別居で暮らす高齢の親への援助を考えたとき、まずは「扶養に入れようか」と考えます。
扶養には「所得税上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2つの制度があり、それぞれ適用条件が異なります。
親の年金額によっては所得税での扶養に入れられない場合や、親が75歳を越えて後期高齢者医療制度の適用となると健康保険の扶養から外れる場合など、気を付けたいところです。
また、親に援助した分を社会保険料控除として節税できる方法もあります。
詳しく見ていきましょう。
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目次
1. 所得税の扶養控除は親の所得制限がある
たとえば配偶者の扶養に入ってパートで働く人が「扶養控除内の金額に抑えよう」と考えるように、扶養控除には扶養に入る人の収入金額に上限があります。
これは親の扶養控除でも同じです。
所得税の扶養控除は「扶養される親族の合計所得金額が48万円以下(2020年分以降)」という制限があります。
親が年金収入のみの場合、年金収入から「公的年金控除」を引いた金額が合計所得金額となります。
この「公的年金控除」は65歳を境に金額が変わります。
公的年金控除の最低保障額で計算をすると、
65歳以上:年金収入が158万円未満
で扶養の条件を満たせます。
逆に言えば、親の年金額がこれよりも多ければ、所得税の扶養控除は使えません。
また、同居・非同居にかかわらず「生計を一にする」ことが条件です。
この「生計を一にする」の判断は、非同居でもある程度の援助によって相手の生活が成り立っていると解釈されればOKです。
たとえば進学しひとり暮らしをする子供の家賃を親が支払っている、高齢の年金生活の親に毎月生活費を仕送りしている、という場合などです。
親が年金で十分に生活できており、子供からの仕送りを使わずに貯金していると「生計を一にする」と判断されない場合もあります。
詳しくは税務署に確認してみましょう。(参考元:国税庁)
2. 健康保険の扶養は親の収入・年齢制限がある
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親が年金受給している場合は、年金保険料の負担はありませんが、国民健康保険料の負担はあります。
子供の扶養に入れることで、親が自分の国民健康保険料を負担することがなくなります。
ただし、以下のような条件があります。
・同居の場合:親の収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(例:親の年金収入が年間170万円の場合、子供の収入が年間340万1円以上)
・別居の場合:親の収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満(例:親の年金収入が毎月10万円の場合、子供の仕送りが毎月10万1円以上)
注意したいのは、親が75歳を越えると後期高齢者医療保険の適用となり、子供の健康保険の扶養に入れることができなくなる点です。
所得税の扶養控除には年齢上限はありませんが、健康保険の扶養に入れる際には75歳という年齢制限があるのです。(執筆者:日本年金機構)
3. 非同居の親の分も社会保険料控除と医療費控除が使える
親が75歳を越えると子供の健康保険の扶養に入れることができませんが、親の後期高齢者医療制度の保険料を、子供の預金口座から引き落とすようにすることは可能です。
子供が代わりに支払った親の保険料は、子供の社会保険料控除に含めることができます。
さらに所得税上の扶養に入っている親の医療費は、別居であっても子供の医療費控除に合算することが可能です。
別居親への援助は、少しでもお得になるようにしたいです。(執筆者:2級FP技能士 久慈 桃子)