パートやアルバイトなどの非正規労働者でも、
「31日以上の雇用見込みがある」
「学生ではない」
という3つの要件を満たすと、労働保険の一種である雇用保険に加入します。
雇用保険には年齢制限がないため、この加入要件を満たす場合には、何歳になっても加入するのです。
ただ社会保険(健康保険、厚生年金保険)と比較すると、保険料がかなり安くなっております。
また失業した時だけでなく、
再就職した時
一定の教育訓練を受けた時
にも、保険給付が支給されるため、うまく活用すれば、かなりお得な保険だと思うのです。

雇用保険から支給される保険給付の、代表的なものとしては、失業した時に支給される失業手当があります。
この失業手当は2種類に分かれており、65歳より前に支給される「基本手当」と、65歳以降に支給される「高年齢求職者給付金」があります。
両者の大きな違いとしては、基本手当は何回かに分けて支給されるのに対して、高年齢求職者給付金は一時金で支給される点です。
また基本手当を受給するために、ハローワークで求職の申し込みをすると、60~64歳から支給される「特別支給の老齢厚生年金」は、支給停止になってしまうため、どちらを受給するのかを、選択する必要があります。
それに対して高年齢求職者給付金は、65歳以降に支給される「老齢厚生年金」や「老齢基礎年金」と併給できるのです。
なお60歳から65歳までの間に、基本手当との併給調整があるのは、特別支給の老齢厚生年金に限られます。
そのため繰上げして65歳になる前に受給を始めた「老齢基礎年金」、障害基礎年金や障害厚生年金などの「障害年金」、遺族基礎年金や遺族厚生年金などの「遺族年金」は、基本手当と併給できるのです。
目次
配偶者を税法上の扶養にするには、年収の要件を満たす必要がある
例えば夫が年末調整や確定申告で、38万円の配偶者(特別)控除を受けられるのは、妻の年収が「150万円以下」の場合です。
従来は103万円が目安だったのですが、法改正により2018年から、この金額に変わりました。
また妻の年収が150万円を超えても、「201万6,000円未満」ならば、38万円より金額が少なくなった、配偶者(特別)控除を受けられます。
ただ夫の年収が「1,120万円超」だと、控除できる金額が減っていき、夫の年収が「1,220万円超」の場合には、配偶者(特別)控除を受けられなくなってしまうのです。
つまり配偶者を「税法上の扶養」にするには、夫婦の両方が年収の要件を満たす必要があるのです。
雇用保険の保険給付は、配偶者(特別)控除に対して影響を与えない
夫婦のいずれについても、会社などから給与を受け取っている給与所得者で、給与以外の収入がない場合、配偶者(特別)控除を受けられる年収の目安は、上記のようになっております。
こういった知識を頭に入れておけば、配偶者(特別)控除を受けられるかで、悩むことはないと思うのです。
ただ給与以外の収入が、一時的に発生した場合には、悩んでしまう可能性があります。
それは例えば退職から、再就職するまでの間に、雇用保険の基本手当を受給した場合です。
特に基本手当と給与の合計が、年間(1~12月)で150万円を超えてしまった時は、どれくらいの配偶者(特別)控除を受けられるかで、悩んでしまうかもしれません。
ただ雇用保険の保険給付は、いずれについても非課税になるため、所得税や住民税は課税されないのです。
そのため基本手当と給与の合計が、年間で150万円を超えていても、給与だけの合計が150万円以下であれば、38万円の配偶者(特別)控除を受けられるのです。
つまり会社などから受け取った給与の年間の合計だけを、判断基準にすれば良いのです。
基本手当日額の金額によっては、社会保険の扶養に入れない場合がある
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厚生年金保険の加入者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者は、年収130万円未満などの一定の要件を満たすと、国民年金の第3号被保険者になります。
この第3号被保険者の期間は、自分で国民年金の保険料を納付する必要がないのに、保険料を納付したものとして取り扱われるのです。
また上記のような要件を満たす方は、配偶者が加入する健康保険の被扶養者にもなれるため、自分で国民健康保険に加入して、保険料を納付する必要はありません。
このように「社会保険の扶養」は、税法上の扶養より大きなメリットがあります。
ですから会社を退職して、収入がなくなった場合には、配偶者の社会保険の扶養に入った方が良いのです。
ただ退職した後に基本手当を受給する場合、退職前6か月の給与を元にして算出された「基本手当日額」が、3,612円以上になると、原則的として社会保険の扶養に入れません。
この理由として基本手当日額が3,612円だと、見込みの年収は130万320円(3,612円 × 360日)になります。
そのため基本手当日額が、これ以上の金額になると、上記の年収130万円未満という要件を満たせなくなってしまうのです。
こういった方については、基本手当の受給が終わるまで、自分で国民健康保険や国民年金に加入して、保険料を納付する必要があります。
なお待機期間(7日)や、給付制限期間(自己都合の場合は3か月程度)については、社会保険の扶養に入れる場合があるので、その辺りを確認した方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)