令和元年分の確定申告で、国税庁HP「確定申告書作成コーナー」で株式投資の申告を行った方は、特定口座年間取引報告書の入力に追加機能があることを目にしたはずです。

「書面で交付された特定口座年間取引報告書の入力」を選択すれば、従来通り報告書の転記画面となりますが、「データで交付された特定口座年間取引報告書」は金融機関からXMLデータを受け取ってないと利用できません。
この追加機能は確定申告手続き省力化の狙いがあるのですが、令和元年分の申告で活用された方はまだ少ないように思います。
今後はマイナンバーカードを所持していると使用できるマイナポータルを巻き込んで、段階的に進めていく動きもあります。
目次
確定申告省力化の動き
確定申告手続き省力化については、まだ実感がわいていない方も多いでしょうが、すでに確定申告書作成コーナー側の整備は進んでいます。
控除証明書のXML取り込み機能はすでに整備されている

生命保険料控除などの控除関係では、目立たない位置にはあるのですが、XMLデータを取り込みできる機能がすでにあります。

生命保険料控除・地震保険料控除のほか、ふるさと納税で活用することが多い寄附金控除においてもXML取り込みが可能です。
証券会社のXML提供状況は?
ただXMLデータは取扱業者が作成して送付しないと、申告する側が活用できません。私も証券会社に特定口座を持っていますが、XMLを発行した証券会社はありませんでした。
ただ野村證券や岡三オンライン証券のように、発行した証券会社もわずかながら見られます。
参考:野村證券:「2019年分「特定口座年間取引報告書」「支払通知書」を電子交付いたしました」
なお以前より各証券会社から特定口座年間取引報告書の「電子交付」が行われていますが、PDFで提供するものでXML取り込みができません。
マイナポータルとの連動化
控除証明書・住宅ローン残高証明書や年間取引報告書のXMLデータを、マイナポータルから参照できるようにする動きがあります。
政府税制調査会で使用された財務省・国税庁の資料によると、控除証明書・住宅ローン残高証明書は令和2年10月から、特定口座年間取引報告書は令和3年1月からデータが参照できるようになる予定です。
参考:政府税制調査会提出資料「納税実務等を巡る近年の環境変化への対応について」P23(pdf)
e-tax(確定申告書作成コーナー)とマイナポータルの連動はすでにできており、マイナポータルで国税庁・税務署からのメッセージを読むことが可能です。
ただ過去には、平成29年分から医療費のお知らせを使って医療費控除の申告ができるよう制度改正がされたのですが、国保を運営する自治体などお知らせを発行する医療保険者側の準備が間に合わなかったこともあります。
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、自分で確定申告書を作成して提出する方が例年より多いという話も聞きますが、XML取り込みによる「確定申告手続の簡素化」が進まないと結局自分で作成するという動きを妨げるようにも思います。
新型コロナウィルス対策自体でも批判があったことですが、日本では官が民に投げて、民間が戸惑うという展開が随所に見られます。
令和2年10月に国のシステムができたと同時に、XMLを発行する金融機関側の準備も間に合わせないと、自分で申告の動きが加速しないと思います。(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)