新型コロナウイルスによる影響は、経済活動にも大きな打撃を与え、既にリストラなどが実施されています。
今後もこの流れは続く見込みですが、住宅ローンの返済は自分自身が動かなければ何も変わりません。
今回は、具体的な返済猶予策を発表しているフラット35の事例をもとに、減少した収入額や、返済延長により増加する総返済額など、実際に数字を当てはめて解説します。
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目次
フラット35の返済猶予策を検証
もともとフラット35では、返済が困難になった債務者向けに返済条件の変更メニューを用意しています。
具体的に確認していくことにしましょう。
返済特例の概要
以下の3つの項目全てにあてはまる方に返済特例が適用されます。
1. 離職や病気等の事情により返済が困難となっている方
今回は新型コロナウイルスによる会社の業績悪化などで会社を解雇されたり、自営業者の倒産などが考えられます。
2. 以下の収入基準のいずれかを満たす方
A、B、Cのいずれかで構いません。
A:年収が機構への年間総返済額の4倍以下
機構とはフラット35を提供している住宅金融支援機構のことです。
Aの条件を具体的に説明すると、毎月返済額が10万円の場合、年間総返済額は120万円です。
これの4倍は480万円、つまりこの場合は年収が480万円以下であれば条件を満たします。
B:月収が世帯人数×6万4,000円以下
例えば4人家族の場合、上記の基準に当てはめると25万6,000円です。
この場合、月収が25万6,000円以下であれば、条件を満たします。
C:住宅ローンの年間総返済額の年収に対する割合(返済負担率)が、年収に応じて以下の率を超える方で、収入減少割合が20%以上
300万円以上400万円未満:35%
400万円以上700万円未満:40%
700万円以上:45%
例えば、年収が600万円に減少した場合、返済負担率は40%を超える必要がありますので、年間総返済額は240万円を超える(毎月12万円を超える)必要があります。
さらに収入減少割合が20%以上必要ですが、この計算式は前々年から前年の収入を用いますので、今年急速に年収が減少した場合は当てはまらないことに注意が必要です。
実際の所は、(A) か(B) の条件が当てはまりやすいと思います。
3. 返済方法の変更により、今後の返済を継続できる方
これに関しては機構の方でも確実に判断するのが難しいので、(1) と(2) の条件に当てはまれば、基本的に承認される流れです。
参考:住宅金融支援機構「今般の新型コロナウイルス感染症の影響によりご返済が困難になっているお客様へ(pdf)」
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フラット35で認められる条件変更
上記の条件を満たした方は、
例えば、35年返済にしていたとしても、完済時年齢が80歳であれば、15年延長して50年返済とすることが可能です。
例:3,000万円を全期間固定金利1%、35年返済と50年返済にした場合の毎月返済額と総返済額
【50年返済】毎月返済額 6万4,000円 総返済額 3,814万円
大抵は返済がある程度進んだ段階で返済期間の延長を行うため、元金と利息の内訳が異なります。
しかし、金利が低いおかげで返済期間を延長しても総返済額はそこまで増えず、有効な対策と考えられます。
失業中もしくは収入20%以上減少で、最長3年間利息のみ支払い可
なお、現在失業中である方、収入が20%以上減少した方は、最長3年間は元金据置(利息のみの支払い)が可能です。
現在は金利が低いので、利息のみの支払いであれば、住宅ローンの負担感はかなり軽減されます。
しかし、元金据置が終わった後に正常復帰出来るか、ここは難しい問題と言わざるを得ません。
債務者別に個別判断する「中ゆとり」や「団信保険料の猶予」も検討
フラット35では「返済特例」以外に、
も設けています。
これは、民間金融機関で言う所の条件変更に該当するものです。
延滞を出す前に、早め早めの相談を心がけていただけたらと思います。
また団信保険料を年払いしている方は、返済が困難である事を証明すれば、払込期限から最長6か月を経過する月の属する末日まで猶予されます。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)
参考:住宅金融支援機構「機構団体信用生命保険(共済)特約制度ご加入者のみなさまへ(pdf)」