新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、在宅勤務となった方が増えています。
しかし、在宅勤務ができない職種の方や、勤務先が適切な対応をとってくれないためにやむを得ず通勤し、仕事をしている方もまだまだ多くいらっしゃいます。
仕事や通勤でコロナに感染してしまった場合は、労災保険給付を受けられます。
そこで気になるのは、労災からいくらのお金をもらえるのかということでしょう。
また、本当に労災の認定を受けられるのかということも気になると思います。
そこでこの記事では、仕事や通勤でコロナに感染してしまった場合に労災はいくらもらえるのかをご説明し、認定を受けるコツについても解説します。

目次
コロナで労災に認定される要件
厚生労働省のホームページで、労働者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合、それが業務または通勤に起因して発症したものであると認められる場合は労災保険給付の対象となることが明記されています。
ただ、これは当たり前のことであり、何ら特筆すべきことではありません。
重要なのは、業務または通勤に起因して発症したと認められる要件についてです。
この要件について、厚生労働省が出した通達では、主に以下の3点にについて、個別の事案ごとに実情を調査して認定すべきとしています。
(2) 感染から発症までの潜伏期間や症状などに医学的な矛盾がないこと
(3) 業務以外の感染源や感染機会が認められないこと
上記であれば、認定を受けるためのコツは以下のようになります。
労災の認定を受けるためのコツ
コロナで労災の認定を受けるためのコツをひとことで言うと、厚生労働省の通達で示された上記の3つの要件を証明できる証拠を作ることです。
具体的には、以下の諸点についてできる限り詳細な記録を残しておくとよいでしょう。
・ 仕事中、周囲に誰がいたのか
・ 通勤は何時ころ、どのような経路で、どのような手段を利用したのか
・ プライベートでいつ、誰と、どこで、どのような用件で会ったのか
・ 症状について、異変を感じてからの経過
もっとも、以上のことを100%証明することは不可能でしょうし、その必要もありません。
以上の諸点をある程度説明できて、業務または通勤によって感染した蓋然性が高いと判断されれば、労災に認定される可能性は高いと考えられます。
認定される可能性を高めるためにも、可能な限り日頃の行動を仕事だけでなくプライベートも含めて記録しておきましょう。
労災給付の金額は平均賃金の8割
労災に認定されたとして、具体的にいくらのお金をもらえるのでしょうか。
それは、次の計算式によって算出されます。
平均賃金は、直近3か月の賃金総額をその期間の暦日数で割って求めます。
平均賃金には基本給や残業代の他、通勤手当や精勤手当、家族手当など通常支払われる手当は含まれますが、賞与や結婚手当、見舞金など臨時で支払われる手当は含まれません。
休業補償給付の計算例
例えば、4月20日に労働災害が発生したとして労災給付を請求する場合は、まず1~3月の平均賃金を計算します。
ここでは、仮に基本給20万円、残業代2万円、通勤手当5,000円、家族手当1万5,000円の1か月合計24万円が毎月支給されていたとしましょう。
この方が1か月(30日)間休業したとすれば、労災給付は24万円となります。
ただし、労災給付を受けられるのは休業4日目以降です。
当初の3日分は、勤務先から平均賃金の60%の補償を受けることになります。
勤務先に損害賠償を請求することも可能
労災の認定を受けられても、100%の損失補償を受けられるわけではありません。
100%の補償を求めたい場合は、不足する分について勤務先に対して損害賠償の請求ができます。
使用者は労働者が健康で安全に働けるように配慮する義務を負っています(労働契約法第5条)。
勤務先がこの義務に違反している場合は、休業損害の満額に加えて慰謝料などの損害賠償を請求できます。
実際に損害賠償請求をするかどうかはともかく、従業員のコロナへの感染を防止する措置をとることは法律上の義務であることは伝えるべきでしょう。
日頃の行動を記録しておこう
この記事では、仕事や通勤でコロナに感染した場合に労災の認定を受けられることを前提として、認定を受けるコツやいくらもらえるのかについてご説明しました。
しかし、感染経路が不明であれば労災の認定を受けられません。
感染を予防するために自分でできることは今後も徹底しつつ、もし感染した場合に備えて日頃の行動を記録しておかれるとよいでしょう。
ただ、年次有給休暇を取る権利があるなら(6か月以上勤務が条件)、有給(給与の100%)を請求し有給をもらい終わってから、もしくはは有給をとれなかった場合に、健康保険に傷病手当金(給与の60%)の申請をした方が、労災申請より手っ取り早いかもしれません。金額は傷病手当金の方が不利ですが。
(執筆者:川端 克成 監修:社会保険労務士 拝野 洋子)