新型コロナウイルスの影響で、休業を余儀なくされ、収入が減少してしまった方もいらっしゃるかもしれません。
収入が減ってしまうと、毎月支払わなければならない家賃や水道光熱費、スマホ代の支払が重くのしかかります。
政府は、収入が減り支払いが困難になった個人や中小事業者に対し、支払いを猶予する特例制度を設けています。
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支払い猶予は政府の「要請」 強制力はない
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今月4日、政府は6日に期限を迎える「緊急事態宣言」を5月31日まで延長することを決めました。
これにより外出自粛と、飲食店や娯楽施設も引続き営業自粛が続くこととなります。
政府はこのような事態を受け、収入が減少した方に対して家賃や水道光熱費、スマホ代などの支払いを猶予するよう要請しました。
しかしあくまで「要請」であるため、強制力はなく、全ての支払いが猶予されるわけではありません。
支払先によって対応も異なるため、詳しく確認していく必要があります。
税金や公共料金などは支払い猶予される
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税金や社会保険料、公共料金などは条件を満たせば支払い猶予措置を受けられます。
しかしスマホ代や家賃などについては、支払先によって対応も異なるため、詳細についてしっかり確認しておく必要があります。
所得税・住民税は最大1年間猶予
所得税・住民税などの税金については、
を受けられます。
対象となる税金は、
・ 住民税
・ 法人税
・ 消費税
・ 固定資産税
などです。
納税に対する猶予制度はこれまでも存在していましたが、猶予を受ける場合は年利14.6%の延滞税の支払いや担保の差し出しが必要でした。
ところが今回は、新型コロナウイルスによる特例制度として、延滞税や担保の差し出しも不要です。
なお納税猶予を申請するには、「納税の猶予申請書」を国税庁のホームページからダウンロードし、猶予を受けたい国税の納付期限までに、所轄の税務署に申請しなければなりません。
また住民税については、住民票所在地の自治体により対応が異なるため、HPなどで確認しておきましょう。
参考:国税庁
社会保険料も猶予措置が用意される
公的年金などの社会保険にも支払い猶予措置がありますが、加入している年金や保険により対応が異なります。
国民年金保険料
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国民年金は、自営業者やフリーランスの方が加入する公的年金で、猶予に加えて払わなくて済む「免除」の制度があります。
実は国民年金には、収入の減少や失業などで保険料を納付することが困難になった場合、猶予や特例免除の仕組みが以前から用意されています。
そのため今回の新型コロナウイルスの影響で新設された制度ではありません。
お住まいの自治体で、
・ 4分の3免除
・ 半額
・ 4分の1免除
の4段階で申請できます。
なお申請には審査を通る必要があり、その際に離職票や廃業届、休業届などが必要です。
厚生年金保険料
会社員が加入する厚生年金は、労使折半の保険料が会社を通じて納付されるため、個人の申請で納付猶予などの措置を受られません。
ただし、今年2月以降の売上が前年比2割以上減少している事業者に対しては、社会保険料や法人税、消費税の納付を1年間、延滞料なしで猶予するとしています。
国民健康保険料
自営業者やフリーランス、厚生年金に加入していないパート・アルバイトの方が加入する国民健康保険にも保険料徴収の猶予制度が用意されています。
国民健康保険料の徴収猶予期間は、自治体ごとに異なりますが、おおむね半年~1年くらいです。
具体的には65歳未満で雇止めなどの理由で失業し、収入が急減した場合、保険料を減額してくれます。
なお申請の手続きは、お住まいの自治体の窓口で行えます。
水道光熱費は最大4か月猶予
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水道光熱費などの公共料金も政府の緊急措置に応える形で、多くの事業者が延納の制度を設けています。
電気・ガス代は住んでいる場所を問わず、5月分までの料金の支払いをそれぞれ1か月繰り延べされます。
水道料金は住んでいる自治体により異なりますが、東京都水道局の場合、コールセンターに電話して事情を説明すると、最長4か月の延納が認められる措置をとりました。
またスマホ代についても同様で、docomo、KDDI、ソフトバンクの大手3社は、申請すれば支払いが5月末まで繰り延べ可能としています。
賃貸向けには特例制度も
離職などにより経済的に困窮し、「住居を失った」または「そのおそれがある」と、住宅確保給付金が支給されます。
支給額は、東京都の場合で単身世帯で5万3,700円、2人世帯で6万4,000円となっています。
支給対象者は申請日に65歳未満で、離職後2年以内の人で、ハローワークで求職の申込みをし求職活動をしていなければなりません。
支給期間は原則3か月ですが、就職活動を誠実に行っていると認められた場合は最長9か月まで延長可能です。
また収入や資産額についても下記の要件を満たさなければなりません。
・ 資産要件(東京都の場合):単身世帯50.4万円以下、2人世帯78万円以下、3人世帯100万円以下
収入が減少しているなら支給対象か確認しよう
今回の新型コロナウイルスの影響により、支給の対象が広がり、離職したかに関わらず収入が減っただけでも支給対象となる可能性があります。
相談窓口は各市区町村の自立相談支援機関が運営しており、受給を検討される場合は相談してみるといいでしょう。(執筆者:FP2級 福森 俊希)