5月4日、政府が新型コロナウィルスの感染拡大に伴う国の緊急事態宣言を5月末まで延長することを発表し、これにより国民の生活は一層の厳しさが増しました。
さらに
といえます。
しかし、状況が刻一刻と変化する中で多くの情報が出回り、却って不安に感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、数多くの情報の中から、「休業」に関して知っておきたい情報を厳選してご紹介したいと思います。
目次
休業の状況ごとに考えてみよう
知っておきたい情報として、「生活を守るためにもらえるお金にはどのようなものがあるか」が重要ですが、これらは状況に応じて異なりますので、まずは整理してみていきたいと思います。
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労働基準法上の休業手当を支払う義務があるのか
労働基準法では、会社都合で休業を指示した場合には賃金日額の60%を支払わなければならない、と定めています(労基法26条)。
まずは、その計算方法を確認しておきましょう。
注意すべき点としては、休日を含まない労働日数で計算し、給与月額の60%を補償するものではないという点です。
実際の支給額は月額給与の半分以下になると考えられます。
加えて、そこから社会保険料や住民税などが控除されるため、手取りの金額はさらに少なくなります。
30万円 ÷ 30日 =1万円
1万円 × 60% × 20日 = 12万円(休業手当の月額)
今回の新型コロナウィルスの感染拡大に伴う国の緊急事態宣言が出されたことで、法律上「会社に休業手当を支払う義務がなくなる」との見解が聞こえてきています。
この点、政府は明確な判断基準を設けておらず、グレーゾーンにあると言わざるを得ません。
ただ、これまでの通常の判断基準(以下の通り)を当てはめられることは示されていますので、そちらを参考に判断することになります。
会社都合でない(=不可抗力による)休業といえるために満たすこと
(1) その原因が、事業の外部で発生したものであること
(2) 事業主が、通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお避けることができないものであること
確かに、一見すると新型コロナウィルスの影響(仕事の受注減や休業の要請など)によって、上記(1)、(2) を満たす可能性は高いといえるでしょう。
ただし、必ずしも会社都合でないとは言い切れない場合も存在します。
例えば「休業要請に該当する業種以外で、職種によって在宅勤務に切り替えることできる場合」には(2) を満たさず、労基法上の休業手当を支払わなければならないケースもありうるのです。
つまり、
ということになります。
休業計画について労使協定を締結し、休業手当が支払われるか
現在、労基法上の休業手当とは別の枠組みとして「雇用調整助成金を利用した休業」が注目されているところです。
これは、従来からある雇用調整助成金の制度について、
で、積極的な活用が求められています。
しかし現実には、「会社からは休業手当は出ないと言われた」、「雇用調整助成金を使ってほしいと訴えたが拒否された」といった数々の相談が労働局に寄せられています。
これは、雇用調整助成金が抱える問題が背景にあります。
雇用調整助成金制度の問題点
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政府の説明不足
以下の点を、きちんと整理して周知していません。
・ 雇用調整助成金は、労基法上の休業手当に該当するか否かに関わらず、申請があれば支給される仕組みになっている
・ 上記の仕組みにも関わらず、緊急事態宣言によって労基法上の休業手当を支払う義務がなくなったと思い込んだ事業主が「義務がないなら申請しない」という論調になってしまう
支給されるまでにどの位の時間がかかるか不透明
・ 政府は「最短で申請から1か月以内の支給を目指す」としているが、実際の事務手続きは停滞している
・ 中小零細企業にとっては、目先の資金繰りが厳しい中なので、いつ支給されるか分からない助成金に対する信頼感が低い
労働者に法的な請求権がない
・ 雇用調整助成金の支給対象は事業主であり、労働者が助成金を直接もらえるわけではない
・ 法的な請求権がないことから、事業主や行政への訴えはあくまで「お願い」でしかない
上記はいずれも従業員(労働者)の立場からも問題なのですが、特に(3) は大きな問題といえるでしょう。
困ったときは団体交渉権も有効手段
有効な手立てとして、労働組合を通じた団体交渉によって休業手当の支払いを求めることが考えられます。
これは、現在勤めている会社内に労働組合がある場合のほか、外部の労働組合(いわゆるユニオンと呼ばれるもの)も含まれます。
労働組合は(組織の社内外を問わず)事業主に対する団体交渉権を持っており、会社は原則として団体交渉を拒めません。
もし社内に労働組合がない場合や、パートやアルバイトのように一般的に労働組合に非加入とされるケースが多い方でも、ユニオンに加入すればこうした団体交渉の場を持てますので、相談してみるとよいでしょう。(執筆者:社会保険労務士 今坂 啓)