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「サヤ取り」と「増玉」

株式「サヤ取り」では、サヤの開閉によって利益を得ます。
サヤが最も有利な状態で仕掛けることができれば、それがベストに違いありませんが、実際にはそうならないことのほうが多いものです。
例えば、サヤの縮小によって利益を得る場合、過去の動きから「サヤが200円前後になったら仕掛けるべきだ」と考えていても、200円で仕掛けた後に250円、300円とサヤが広がっていき、含み損が発生することがあるのです。
一般的には、含み損が小さいうちに損切りすることがよいとされているため、サヤが不利に展開した際にも一旦決済してしまう方法が考えられます。
どちらか一方の銘柄が何らかの材料によって突飛な動きとなり、サヤが不利に展開したような場合には損切りも検討すべきです。
しかし、そのような異常な動きが見られなければ従来のサイクルの中でサヤが動いているだけであり、いずれ見込み通りに開閉するものと考えられます。
したがって、
なのです。
この可能性を考慮して、最初の仕掛けで自己資金一杯に建てることは禁物です。
例えば、
のです。
「増玉」の実際の例
増玉の実際の例を見てみましょう。
ここでは、以前紹介した三井物産・参天製薬のペアで解説します。
三井物産・参天製薬のサヤの動き
このペアの2018年のサヤグラフは次の通りです。

この調査結果をもとに、
・ サヤが-100円前後になったら、三井物産を買い、参天製薬を売り、サヤが0円前後に縮小したら利確
という、縮小を取る戦略を立てました。
この戦略をもって、2019年にサヤ取りを実践したとします。
2019年のサヤグラフは、次のようになりました。

仕掛けと増玉のやり方
仕掛けと増玉は、次のように行います。
Step1:
1月11日の終値で、サヤは198円となった。
翌日の始値にて、三井物産を1728円で売り、参天製薬を1513円で買った(それぞれ100株)。
仕掛けのサヤは215円となった。
Step2:
1月15日、三井物産は1,751円、参天製薬は1,480円、サヤは272円となり、74円の含み損が発生した。
ここでそれぞれ100株増玉した。
翌日始値にて、三井物産を1751円で売って平均建値を1,739円、参天製薬を1,510円で買って平均建値を1,511円とした。
増玉後のサヤは228円となった。
Step3:
その後、サヤは縮小に向かい、2月28日、三井物産は1,750円、参天製薬は1,735円、サヤは15円となった。
翌日始値にて、三井物産は1,745円で決済して-1,100円の損失、参天製薬は1,735円で決済して4万4,700円の利益、差し引き4万3,600円の利益が得られた。
これは、サヤ取りにおける増玉の典型的なケースです。
他にも、8月にサヤが-100円を大きく超えて-275円まで拡大して増玉のチャンスがありました。
「増玉」の経験はサヤ取りの利益を伸ばす
サヤ取りを始めたばかりの頃は、サヤが不利に展開した際に焦ってしまうものです。
しかし、当初の調査がしっかりできていれば大きく見込み違いが起こるリスクは低く、むしろ増玉のチャンスです。
サヤ取りで利益を伸ばしていくために、増玉の経験も積んでいきたいものです。(執筆者:兼山 艮)