現在、世界はコロナウイルスによる感染拡大で経済危機となっていますが、2008年はリーマンショック、1997年は日本の金融危機がありました。
つまり、おおよそ10年単位で世界的な経済危機が発生しており、今後もテールリスクと呼ばれる、「発生確率は低いけれども発生すると大きな影響を与えるリスク」は生じるでしょう。
住宅ローンを抱えている世帯にとっては、経済危機のたびに住宅ローンリスクと向き合うわけですが、このような時こそ万が一払えなくなった時の対処法を考える必要があります。
今回は、住宅ローンが払えなくなった時にどのような方法で解決するのが最も有利なのか、3つのタイミングごとに具体的に解説していきます。
目次
1. 延滞発生
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世帯主がリストラされたり、収入が減少したりした場合は、フラット35を中心に、返済特例で返済期間の延長ができます。
また収入の減少割合が大きい場合は、元金据置という数年間は利息の支払いだけで済む制度もあります。
金利が高かったころは、返済期間の延長をしても毎月返済額があまり変わらなかったり、利息の支払いだけでも結構な金額になったりしていました。
しかしフラット35の金利が1%台である現在は、返済期間を延長すれば毎月の返済額が減り、総返済額もあまり変わりません。
元金据置での利息の支払いも、かなり少額で良くなりました。
これらの制度を利用できる人は積極的に利用し、その間に家計の正常化を図るのが賢明です。
2. 再度延滞が発生
しかし実際の所、このように返済を猶予している人が再度延滞してしまうことがよくあります。
なかなか、以前と同じ状態には戻らないのです。
そうすると、銀行の担当者は一度返済を猶予していることもあり、早期の正常復帰を求めてくると同時に、できなければ代位弁済か任意売却をと言い出します。
いきなり代位弁済や任意売却と言われても、延滞していて余裕がない時には頭に入らないでしょう。
具体的には次の通りです。
代位弁済
代位弁済とは、銀行が預かっている住宅ローンを系列の保証会社に代わりに弁済してもらうことです。
代位で弁済するので代位弁済、代弁と言います。
任意売却
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一方、任意売却は、あくまで任意に自宅を売却し住宅ローンを完済することです。
任意で売却するので任意売却、任売と言います。
任意売却が有利
昔は任意売却の制度はなく、代位弁済から競売へと進み回収していました。
しかし競売は時間がかかり売却価格も低くなることから、銀行が任意売却専門の不動産業者と提携するようになりました。
まだ保証会社へ代位弁済される前ですので、当事者も判断がつかないことが多いのですが、任意売却で住宅ローンが完済できるのであれば、任意売却が最も有利です。
保証会社へ代位弁済されてから延滞金を入れるとしても現実的にはかなり厳しく、保証会社で競売になってしまったら、自宅は任意売却よりも安い価格でしか売れません。
3. 保証会社で競売
保証会社でも市場性が高い物件であれば、再度任意売却の打診もします。
しかし、ここで話が物別れに終わると競売へと進んでいきます。
自宅を有利に処分できるチャンスを活用する
このように流れを見ていくと、代位弁済か任意売却を決める時が、自宅を有利に処分できるラストチャンスです。
このチャンスを有効活用して頂ければと思います。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)