医療費の窓口負担は、6歳以上70歳未満の方であれば医療費総額のうち3割で済むことはご存じの通りです。
日本には国民皆保険制度があり、全国民が何かしらの保険に加入し、医療費の窓口負担を軽減されます。
しかし、いくら3割負担といっても病気の種類によっては高額な治療代がかかることもあります。
特に、新型コロナウイルス感染拡大により収入が減少してしまった方にとっては、高額な医療費は大きな負担となることでしょう。
そこで今回は、医療費の窓口負担を軽減してくれる、「限度額適用認定証」という制度についてお伝えしていきます。
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目次
「限度額適用認定証」とは
「限度額適用認定証」とは、病院の窓口で提示をするだけで、1か月ごとの医療費の支払い負担が軽減される証明書です。
基本的に保険料を納めている人であれば、誰でも利用できる社会保障制度です。
医療費の支払いがつらい時に利用
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保険証を病院窓口に提示すると自己負担額がある程度軽減されますが、それでも医療費の支払いは家計にとって大きな負担です。
公益財団法人生命保険文化センターによると、1日あたりの入院時の自己負担費用の平均は2万3,300円とっているようです。
仮に30日入院すると69万9,000円も自己負担が発生します。
このような医療費の窓口負担を軽減してくれるものが「限度額適用認定証」です。
「限度額適用認定証」は、自分の加入している各健康保険の窓口に申請し、発行してもらいます。
申請書の提出後1週間ほどで発行されますが、適用されるのは「申請書が受理された月の1日から」です。
たとえば、5月31日に申請書が受理された場合には5月1日からの適用となるため、5月中の医療費については適用されます。
「高額療養費」との違い
「限度額適用認定証」とよく似た制度に「高額療養費」がありますが、違いは自己負担限度額以上の支払いが不要になるかどうかです。
が、
です。
また、「限度額適用認定証」は事前申請ですが、「高額療養費」は事後申請です。
仮に、入院した日に「限度額適用認定証」の発行が間に合わなくても問題なく利用できます。
ただし、その場合には、入院した月の月末までには提示するようにしましょう。
さらに、各健康保険によって有効期限も定められているため、いつまで利用可能なのかを発行時に確認するようにしましょう。
「限度額適用認定証」の3つの注意点
「限度額適用認定証」を利用するには、大きく3つの注意点があります。
利用時に慌てないためにも、ここでしっかりとポイントを押さえておきましょう。
注意点1:限度額が設定されている
「限度額適用認定証」を利用する際に、以下のように自己負担限度額が設定されています。
【1か月の自己負担限度額(国民健康保険・協会けんぽ)】
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※ 総医療費とは、保険適用される診察費用の総額(10割)です。
年収400万円の場合の自己負担上限額
年収400万円(標準報酬月額約33万円)の場合で、自己負担上限額を計算してみましょう。
1か月でかかった診察費用の総額が30万円だとすると、次のように自己負担上限額が設定されます。
1か月の自己負担上限額は8万430円となり、この金額以上は窓口で支払わなくても済みます。
なお、上記の自己負担上限額は「国民健康保険」と「協会けんぽ」の場合で、「健康保険組合」の場合には組合によって上限額が異なる場合もありますのでしっかりと確認しておきましょう。
注意点2:対象になるものとならないものがある
「限度額適用認定証」は、1か月の医療費全てが自己負担上限額以下になるものではありません。
治療のための医療費として認められないものは、基本的に対象外となってしまいます。
たとえば、
・ 保険適用外の特別室の室料
・ 差額ベッド代
・ 歯科の自由診療
などは対象外です。
このような制限があるとはいえ、3割負担に比べると窓口で支払う医療費の負担は軽減されることでしょう。
注意点3:2つ以上の病院に同時にかかっている場合には別々に計算
1か月の間に2つ以上の病院にかかっている場合には、病院ごとの医療費を計算します。
「限度額適用認定証」の自己負担上限額は、あくまで1つの病気の治療にかかる費用ごとの計算されます。
たとえば、
されます。
また、1つの病院・診療所でも通院と入院とではそれぞれ別で計算されるので注意しましょう。
「限度額適用認定証」の申請方法
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「限度額適用認定証」を申請については、加入中の「国民健康保険」や「協会けんぽ」、「健康保険組合」のホームページで手続きの流れを確認しましょう。
多くの場合、ホームページから「限度額適用認定申請書」をダウンロードできます。
健康保険組合によっては、所得区分を把握するために源泉徴収票の提示を求められることもあります。
申請書が受理され、所得区分が認定されると「限度額適用認定証」が送られてきます。
こちらを医療機関や薬局、指定訪問介護事業者の窓口に提示することで、1か月の自己負担額以上の医療費を支払う必要がなくなります。(執筆者:福森 俊希 監修:社会保険労務士 拝野 洋子)