不倫(不貞行為)を原因とする離婚で、不倫の相手方に慰謝料を請求できるという話を以前しました。
夫婦間以外に、慰謝料を請求できる関係者がいるかどうかについても気になるところです。
以下、「妻子ある男性が独身女性と不倫行為をした」ケースで説明します。
目次
夫婦の子は慰謝料を請求できるのか

夫婦の子は父親の不倫相手に慰謝料を請求できるのでしょうか。
不倫行為は共同不法行為であり(民法第719条)、相手だけが悪いわけではありません。
しかし結果両親が離婚し、家庭が崩壊してしまったのですから、子の精神的苦痛は母と同様、あるいはそれ以上です。
その原因の一端を担った不倫相手に対し、子が母とは別に慰謝料を請求することは当然に認められるように思えます。
ところが、最高裁はこれを認めないという判決を出しています。
その理由として、
と述べています。
下級審では請求を認めた事例もある
不倫による夫婦関係の破綻で、妻は直接損害を被ります。
その結果離婚となり、父親が家を去っていっても、それはあくまでも親子間の問題に過ぎないし、「子の受ける不利益は養育費に反映すれば良い」という考え方もあるでしょう。
ただ、「釈然としない」、「子にも認められる場合もあるのではないか」という意見も少なくなく、実際、下級審では子からの請求を認めた事例があります。
相手の女性が意図的にモーションをかけていたことが明らかな時などは、認めても良いのではないかと思います。
不倫相手からの請求はできるのか

では、不倫をしていたのがばれて、男性が不倫相手と別れ、妻子のもとに戻った場合、不倫相手から男性へ慰謝料請求はできるのでしょうか。
「共同不法行為の片棒を担いでいたくせにずうずうしい」、「自分も楽しんだのだからお互いさま」、「請求なんてとんでもない」など、かつてはそういう風に考えられていました。
しかし最高裁は、
としています。
この事案では、
・ 実は離婚する気など毛頭なく
・ 不倫相手の妊娠を知ると会うのを避けるようになった
という状況で、これで認められないとなると少なくとも今の時代では通用しないでしょう。
ちなみにこの判決は約50年前に出されました。
不倫相手は慰謝料を請求し返せる
妻は、結果として離婚に至らなくとも、精神的損害を負ったとして不倫相手に慰謝料を請求できます。
しかし相手側はそれに対し、明らかに夫側の責任が大きいと思えば、男性に慰謝料を請求し返す方法をとれます。
ただここまでこじれると、正直裁判で何らかの結論が出されても、根本的解決と言えるかどうかは少々疑問ですね。
それでも、一応のけじめはつくのではないかと個人的には思います。(執筆者:橋本 玲子)