養育費の支払いが滞っているとき、公正証書での離婚協議書などの債務名義を持っていたとしても、差押えの前に検討すべきことについて以前述べました。
ここであげた「内容証明」の書き方について、詳しく解説します。
目次
内容証明について

内容証明郵便(以下「内容証明」)とは、
・ 誰が、誰に対して
・ どのような内容の手紙を送ったか
以上を郵便局(郵便事業株式会社)が証明してくれるものです。
第三者である郵便局が証明者となることから、いわゆる裁判時の証拠となり得るのです。
ただし、当然ながら書かれた内容自体が真実であることの証明には使えません。
特に郵送した日付の証明となる効果が大きく、時効を中断するための催告や、クーリングオフによく利用されます。
養育費支払請求での効果

翻って養育費に関しては最後の支払いがあってから5年間は時効にかからないため、日付の証明の恩恵はさほどありません。
その効果は、もっぱら「心理的」なものが大きくなります。
普通に生活を送っている人が内容証明を手にする機会はそうそうありません。
文面は物々しく、法的手段に移行することを匂わせており、受け取った者に何らかの対応をすべきではないかという心理を、普通郵便と比較してかなり大きく抱かせることができるのです。
養育費ではなく家賃支払請求ですが、実際のケースとして下記のようなことがありました。
「内容証明」そのものにより相手の本気度に気づき、もうごまかしは効かないと思わせるのです。
直ちに送ってもよいか

養育費支払は毎月一定額の振込というケースが多いと思いますが、1月か振り込まれなかったからと言って「いきなり内容証明」というのは感心しません。
特に、2020年5月現在のように社会情勢が不安な時は、養育費を受け取る側ももちろんですが、支払い側の経済状況が予想外に圧迫されていることや、逆に忙しすぎて時間が取れない場合などが考えられます。
相手の勤務先の動向を調べてみたり、相手と直接連絡が取れる場合は、まずは尋ねてみましょう。
しかし、
・ 直接連絡を取りたくない場合
・ 相手が遠方にいて動向が分からない場合
などは、2~3か月ほど滞れば内容証明を送ってもよいと思われます。
内容証明の書き方
内容証明の形式的な書き方や料金についてはネット検索すればすぐ分かります。
を守れば、基本的に何を書いても構いません。
ただし、1枚増えるごとに料金が260円ずつ追加されるので、内容はできる限り簡潔にまとめましょう。
養育費支払であれば、協議書の支払内容を列挙し、いつから何回分、計いくら滞っているかを示し、期限を決めての支払を請求することを入れ込みます。
そして、「履行(返信)なき場合、法的措置を取ります」という文章で締めるのが一般的です。
注意するのはあまり過激な書き方になりすぎないことです。
・ 相手の生活を壊してやる
などの表現は、程度によっては脅迫罪が成立することがあります。
冷静で簡潔な内容ほど、むしろこちらの本気さが表れるのです。
場合によっては法律家への相談も
自分の住所を相手に知られたくない場合には法律の専門家に相談してみましょう。
弁護士であれば代理人として弁護士名で、行政書士であっても作成代理人として行政書士名で送付することが可能です。
法律家が送付したことで、相手にこちらの本気度をより示すことができる効果も期待できます。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)