今回のコロナショックでは、特にテナント系の不動産では家賃の減額交渉や支払猶予といった話が話題に上がっています。
大家さんはお金持ちだから、こんな時くらい交渉に応じてくれても良いという風潮もあります。
しかし、大家さんもいろいろなパターンがあります。
代々地主家系で無借金経営している大家もいれば、不動産賃貸業として銀行から借り入れを行っている不動産投資家もいます。
「家賃収入 = キャッシュフロー」ではなく、不動産賃貸業では空室リスクや運営費、ローン返済などの経費が掛かります。
しかし、満室想定家賃が全て手元に入ると勘違いして物件を購入してしまう人が多いのも事実です。
今回は、家賃収入とキャッシュフローの違いについてお話しいたします。
目次
満室想定家賃と実質家賃

不動産投資で物件を購入する際には、
・ 実質家賃
と、家賃は2パターンで表されます。
4室のアパートがあり、平均家賃5万とした場合
1月の満室想定家賃は、4室 × 5万 = 20万
実際には3室しか入っていない場合
1月の実質家賃は、3室 × 5万 = 15万
家賃収入は満室を想定
物件資料では、上記2パターンの家賃が記載されることになります。
このアパートが2,000万で売り出されると、利回りは、
・ 満室想定利回り → 年間家賃240万 ÷ 物件価格2,000万 = 実質利回り12%
・ 実質利回り → 年間家賃180万 ÷ 物件価格2,000万 = 実質利回り9%
です。
実質利回りについては、総家賃収入から経費を引いた実質家賃に対して使う場合もありますが、今回は現状の家賃と言う意味で実質家賃と言う言葉を使っています。
家賃収入は、このように時点で変わっていくのですが、基本的には不動産投資でいう家賃収入は満室想定家賃収入を指します。
不動産投資で掛かる経費

不動産投資では、家賃収入が丸ごと大家さんの手に入るわけではなく、
・ 税金
・ ローン返済
などが引かれて、利益が出た場合は、そこから所得税が引かれて最終的な手残りとなります。
区分マンションの場合
【運営費】
・ 管理費
・ 修繕積立金
・ 賃貸管理委託費用
・ 火災保険
【税金】
・ 固定資産税
・ ローンがある場合はローン返済
※ただし、経費として計上できるのは金利のみ
となります。
アパートなどの集合住宅の場合
【運営費】
・ 建物管理
・ 清掃・共用部分などのメンテナンス費
・ 賃貸管理費
・ 共用部の光熱費
・ インターネット費用
・ 町内会費
・ 火災保険
【税金】
・ 固定資産税
・ ローン返済
となります。
実際のキャッシュフロー

不動産投資で得られるキャッシュフローは、満室想定家賃から経費を引いた金額で算出されます。
例えば、1月の満室想定家賃50万円の10室のアパートがあるとします。
アパートの場合は、運営費は15%~20%なので、ここでは15%として7.5万円とします。
固定資産税は年間20万、ローン返済は月約30万(金利1.5%、8,500万フルローン、30年)とします。
となります。
この時点のキャッシュフローは、税引き前のキャッシュフローということで、「BTCF(ビフォータックスキャッシュフロー)」と言います。
ここから、その他の経費や減価償却費などを引いて、最終的な手残りにかかる所得税を引いた金額が実質の「ATCF(アフタータックスキャッシュフロー)」となります。
一般的に不動産投資の分野では、ATCFは人によって税率が変わるので、BTCFをキャッシュフローまでを算出することが多いです。
満室想定家賃ではなく「キャッシュフロー」を確認
不動産投資で失敗する人の多くは、利回りが高い物件の方が収入もたくさん得られるので安心だと勘違いして物件を購入しています。
一般的に不動産投資の分野では、「利回り = リスクの高さ」であり、収入の多さよりも、実質どの程度キャッシュフローが得られるかが重要です。
実際の経営では、運営費以外にも、
・ 原状回復
・ 募集に掛かる費用
など、そのほか必要になるケースもあり、机上の計算よりもさらに収支は厳しくなります。
毎月のキャッシュフローを知り正しい計算を
不動産投資で失敗しないためには、毎月どの程度キャッシュフローが残り、空室がどのくらいまでであればローン返済に困らないかまでシミュレーションしておく必要があります。
キャッシュフローが全てではありませんが、非常に重要な指標になりますので、物件購入の際は必ずシミュレーションしてください。(執筆者:宅地建物取引士 山口 智也)