新型コロナウィルスの感染拡大に伴う経営の悪化から、解雇や雇止めが増加しています。
解雇や雇止めにあった人は3,000人を超し、4月の1か月間で3倍以上まで急増している状況です(厚生労働省調べ)。
解雇や雇止めにより収入がなくなることは、生活を守る上で大きな痛手です。
そこで今回は、解雇や雇止めにあった場合に、生活を守るために確認しておくべきポイントをご紹介したいと思います。
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目次
生活を支えるための仕組みは異なる
ひとくちに確認しておくべきポイントといっても、「どのような仕組みで生活を支えられるのか」が異なります。
まずは仕組みの違いに分けて確認ポイントを整理してみていきたいと思います。
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解雇予告手当の支払いがあったか
労働基準法20条は、解雇について「30日前に解雇予告をするか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払うこと」を求めています。
つまり、まず最初に確認すべきことは、解雇を通知された時点で、「労基法上の解雇要件を満たしているか」です。
なお、解雇予告の期間と手当の支払いはトレードオフの関係にあります。
例えば、15日前に予告し、15日分の手当を支払うことも可能です。
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なお、労働基準法20条は、但書で「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」には(解雇予告手当を支払わず)即時解雇を認めていますので、これを理由に手当の支払いを拒まれる可能性があります。
しかし、こちらは例外的な取扱いとなっており、労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。
即時解雇が認められるのは認定日以後に行った解雇についてですので、解雇無効の期間が生じる可能性があるのです。
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解雇無効の期間がなかったか
上記の他にも、解雇無効の期間が生じる可能性はあります。
労働基準法19条によれば「業務上の傷病による休業、産前産後の休業」については、「休業中とその後30日」は解雇禁止となっています。
このとき会社としては、労基署長の認定を受けて即時解雇することとなります。
こうした労基署長の認定をとっていない場合には休業者についても解雇無効の期間が生じる可能性があります。
例えば、通常通り就業している従業員には30日前の解雇予告を行っていたにも関わらず、産前産後休業中の従業員にはこのことが告げられずにいた場合には、この休業中の従業員に対しては解雇無効の期間が生じることとなります。
現実には、会社の経営状態の著しい悪化を理由に、労働者側にきちんとした説明がなされないまま解雇通知を受けるケースが少なくありません。
このような場合、解雇無効の期間はおろか解雇予告手当の支払いさえ疑問をもたれることがあります。
まずは各都道府県にある労働局の相談ダイヤルに電話してみましょう。
現在は、新型コロナウィルス感染拡大に伴う解雇問題に対応する専用ダイヤルを設けているところもありますので、ホームページで確認すると良いでしょう。
雇止めの場合はどうなるのか
更新してきた有期の労働契約について、次期の更新がなされず期間満了で契約終了させることを「雇止め」といいます。
ここで問題になるのは次の通りです。
雇止めで問題になる2パターン
(2) 継続更新の期待のある労働契約を期間満了で終了させようとする場合
上記(1)、(2)のいずれについても、解雇と同じく、新型コロナ感染拡大の影響によって「やむを得ず事業の継続が不可能となった場合」に該当するか否かで判断されます。
あらかじめ別の理由により今回の契約で終了と決められていたものでなければ、原則として解雇と同様に取り扱われることになります。
無期雇用のいわゆる正社員と比べて不当な取扱いを受けたと感じる事実がある方は、労働局に相談してみましょう。
可能な限り自分の「雇用される」権利を守る
ここまでは解雇が通知された時点に焦点を当て、解雇予告手当の仕組みや解雇無効の期間についてみてきました。
私見ではありますが、経営者の中には「従業員の生活を守りたい」と気持ちでは思っていても、労働法の知識があいまいなために結果として誤った判断をされる方がいらっしゃいます。
今回の新型コロナ感染拡大の影響による解雇は正当な理由とみられる可能性が高いです。
しかし、解雇通知のやり方や手続きに不備があることが考えられます。
「不備によって被る不利益を避け、可能な限り自分の「雇用される権利」を守る」という視点で確認するのが良いと思われます。(執筆者:今坂 啓)