新型コロナウイルスの影響で、国や自治体は、密集・密閉・密接となる3密を避けるよう国民や住民に呼びかけています。
葬儀や法要の場は、まさに人が集まり、亡き人をしのぶためにあります。
しかし、亡き人を弔うために葬儀場に駆けつけたいと思う反面、参列をすべきかどうかと判断に悩む人もいるのではないでしょう。
実際に松山市の葬儀場でクラスターが発生したという事例もあり、葬儀だけでなく多くの寺院でも、法要や行事を中止あるいは延期の措置を余儀なくされています。
そんな中で注目を集めているのがオンライン読経です。
目次
3密回避で注目を集める「オンライン読経」
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日本全国の寺院や葬儀社が、YouTubeやZoomなどのアプリを用いた読経の配信に取り組んでいます。
奈良の東大寺は、「ニコニコ動画」を通じて、奈良の大仏「毘盧遮那仏」の定点生中継を5月31日まで行っています。
大仏殿の拝観を停止したことを受け、24時間リモート参拝できるようにしたものです。
ニコニコ動画ではその他にも、
・ 福井県にある「照音寺」
・ 東京都にある「築地本願寺」
の法要の模様を生中継しています。
また、日本全国の寺院が積極的にオンライン配信を行っています。
オンライン配信例
・ 島根県にある浄土真宗本願寺派の僧侶武田正文さんによる「仏心チャンネル」
など、各地のお寺が朝のお勤めの配信に精力的になっています。
これは、コロナウイルスによって自粛を余儀なくされている檀信徒に対してどのようにつながっていくかを模索する中で起きた動きだと言えるでしょう。
葬儀や法要で活躍「スマ坊さん」と「スマ僧侶」
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僧侶のオンライン読経を葬儀に結びつけたのが、「スマ坊さん」を運営する、愛知県春日井市の「株式会社終楽」です。
同社は、2020年3月に業界初の非接触型僧侶派遣「スマ坊さん」のサービスを開始しました。
葬儀や法事の場面に僧侶を招かない代わりに、寺院の本堂で故人向けに行われた読経をオンライン配信しています。
家族はスマホから流れてくる読経に合わせて合掌や焼香をして故人を弔います。
東京都港区にある「ライフエンディングテクノロジーズ株式会社」も同様のサービス「スマ僧侶」をリリース済です。
僧侶側からすれば、自坊にいながら読経ができるために、時間的拘束が少なくなります。
そのため、とくに「スマ坊さん」は、読経料も一般的な相場に比べると安く設定されています。
一般的な相場より安価なオンライン読経の料金
両者の料金体系を下の表にまとめました。
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アフターコロナの世界の中で、オンライン読経が新たな弔いの形として普及してくかどうかの評価には、いましばらく時間が必要でしょう。(執筆者:五十嵐 信博)