厚生労働省が発表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、平均年間収入は母子世帯で243万円、父子世帯で420万円であり、ひとり親世帯の家計は決してラクではありません。
特に、離婚直後の医療費は、急変した家計の大きな負担です。
「ひとり親家庭等医療費受給者証」が手元に届くまでの間の医療費は3割自己負担となり、離婚直後の家計のなかで大きな割合を占めてしまうからです。
今回は、ひとり親家庭に欠かせない「ひとり親家庭等医療費受給者証」が届くまでの間にかかってしまった医療費への対処について紹介します。
目次
ひとり親家庭等医療費助成制度とは

ひとり親家庭等医療助成制度とは、ひとり親家庭等の母親や父親などの養育者、および18歳年度末までの扶養児童(一定の障害がある児童は20歳まで)が医療機関を受診した場合に、医療費の一部負担金を県と市町村で助成し、ひとり家庭等の経済的負担を軽減するための制度です。
助成を受けられる条件は次の3つです。
(2) 国民健康保険、社会保険、共済組合などの健康保険に加入していること
(3) 児童扶養手当に準じた所得制限を超えていないこと
助成制度の対象として認定されると「ひとり親家庭等医療費受給者証」が郵送で届きます。
医療機関で受診する際に受給者証を提示すると、受給者証に記載された自己負担金額を上限とした自己負担金だけを支払いですみます。
ひとり親家庭等医療費受給者証が届くまでの間は3割の自己負担

「ひとり親家庭等医療費受給者証」は、助成対象となるかどうかの審査後に交付されますが、申請してから手元に届くまで約3~4週間ほどかかります。
つまり、受給者証が手元の届くまでの間に医療機関にかかった場合には医療機関窓口での支払いは3割となり、離婚直後のひとり親家庭の家計には大きな負担となります。
筆者も申請から約1か月の間に体調を崩して医療機関にかかりましたが、離婚直後で収入も不安定だったことから医療費が大きく家計に響いた苦い経験をしました。
当時は毎日の生活だけで大変だったこともあり、「いま受給者証があれば、きちんと病院に行けるのに…」と何度も涙したこともあります。
医療費3割を負担した場合、申請日まで遡って払戻し手続き

では、受給者証が届くまでは3割自己負担で医療機関にかかるしかないのかというと、実はそうではありません。
ひとり親家庭等医療費の助成の起算は、あくまでも「申請した日」だからです。
つまり、
お住まいの自治体の担当窓口で医療費還付申請書に3割自己負担で支払った領収書を添付して手続きすると、各自治体が定めた支払日に返金されます。
また、決まった医療機関に定期的に通院している場合には、手元に届いた受給者証を医療機関や処方薬局の受付で提示すれば会計時に払い過ぎた自己負担額分が返金されるケースもあります。
診察前に、医療機関や処方薬局の受付で確認してみるのもよいことでしょう。
ひとり親家庭等医療費受給者証は毎年更新
ひとり親家庭の健康を支える心強い味方でもある「ひとり親家庭等医療費受給者証」は、毎年、児童扶養手当と同様に審査されたうえで更新されます。
「児童扶養手当の所得制限を超えている」など助成対象の条件に当てはまらない場合には、ひとり親家庭等医療費受給者証は更新されません。
記載されている有効期間をしっかりと確認して、医療機関に提示するようにしましょう。
家計を気にせず安心して医療機関を受診する
ひとり親家庭になると収入も家計も厳しい環境となるケースが多いのが現実です。
しかし、家計を気にして医療機関にかかることをためらうよりも、ひとり親家庭等医療費助成制度を活用しながら「必要な時に」、「家計を気にすることなく」、「安心して適切な医療サービスが受けられる」ことが、子どもと健やかな生活を送るために大切です。(執筆者:花見 結衣 監修:社会保険労務士 拝野 洋子))