フリーランスなど個人事業主は、支出した金額が事業経費として認められるかどうかで、納める所得税の金額が変わります。
小さい子どもがいる家庭では、託児所や保育園に預けて仕事をすることも少なくありませんが、残念ながら保育料は事業経費として計上できません。
ではどうして保育料は経費として計上できないのか、その理由について解説します。

目次
経費計上できるのは事業に直接必要と認められた費用のみ
事業所得で経費計上できる費用とは、
業務上発生する販売費
一般管理費など
に限定されています。
とくにポイントになるのが、「売上を得るために直接要した費用」かどうかです。
たとえばラーメン屋を営んでいる場合、小麦粉はラーメンを作るために必要不可欠ですので、小麦粉の購入金額は経費として計上できます。
一方で、店主自身の飲食代や私用の交際費は、ラーメン屋の事業に直接は関係ないため、経費として計上できません。
なお事業と私用で兼用している車などは、事業用として使っている割合のみを経費として含めることが可能です。
保育料は事業とは直接関係のない経費
個人事業主の支出は、事業経費(仕事)と家事関連費(プライベート)に分けて考えなければならず、事業経費のみが経費として控除できます。
共働きや1人で子育てをしている家庭では、子どもを託児所など預けないと仕事ができません。
しかし保育料は事業に直接必要な経費とはみなされず、また業務上発生する費用でもありませんので、家事関連費に該当します。
家事関連費は経費計上できませんので、保育料は所得税上、考慮されない支出です。
ちなみに、夫婦共働きが一般的な欧米諸国の中には、ベビーシッター代などの保育関係の費用を税額控除として、認めている国もあります。
日本においても、保育料などの費用を税制面からバックアップするための制度、「家事支援税制」について議論はされていますが、まだ法律整備はされていません。
キャバクラ代が経費計上できるのは事業用必要と判断されているため

保育料が経費計上できない話題になると、比較対象として「キャバクラ代は経費計上できる」との話が出てきます。
キャバクラ代が経費計上できるのは、事業に直接要した費用(接待交際費)と判断されるケースのみです。
したがってプライベート使ったキャバクラ代や、過剰な接待交際費については、税務署から指摘されることもあります。
法律根拠のない節税術は税務署から指摘を受ける可能性がある
法律根拠ない裏ワザによる経費算入は、税務署からまだ指摘を受けていないだけで、税務調査により指摘を受ける可能性があります。
そのため経費の可否判定については、税理士や税務署など専門家の意見を聞くことをオススメします。
保育料が経費として認められないのは、1億総活躍社会時代に即していません。
欧米と同じように「家事支援税制」が整備されれば、もっと働きやすい社会が形成されていくと思いますので、できるだけ早く法律を改正してほしいです。(執筆者:平井 拓)