脱税事件はテレビやネットニュースでたびたび報道されますが、なかには逮捕される人もいます。
しかし、税務調査は身近な存在であり、所得税の税務調査だけでも1年間で61万件も行われおり、自分が調査対象者になる可能性も否定できません。
参照:国税庁「平成30事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(pdf)」
一方で、脱税した金額が少額であれば税務署に見つからないと思っている人もいるかもしれませんので、税務調査が行われる際の金額基準があるかどうかについて説明します。

目次
税務調査は税務署が必要と判断すれば金額に関係なく実行される
結論から申しあげると、税務調査の「できる・できない」について、金額基準はありません。
極端な話ですが、1万円の申告漏れに対しても税務調査は可能ですし、実際に調査を行うケースもあります。
ただし、平成30年分の所得税の確定申告書は2,222万件もあり、申告した人全員に対して調査をするのは現実的に不可能です。
従って、誤った申告をした人でも、税務署から指摘をされないまま時効を迎えることも少なくはありません。
1円でも税金をごまかす意図があればそれは脱税行為
確定申告は大変ですし、不慣れな手続きにどうしてもミスが出てしまうのは、やむを得ないこともあります。
しかし、納める税金を少なくする意図があれば、たとえその金額が1円であったとしても、それは脱税行為に該当します。
また、納める税金を減らす以外に、還付金額を水増しする不正還付も違法行為です。
ちなみに、自宅に税務署職員が訪問する調査だけが、税務調査ではありません。
税務調査の大半は電話や税務署への呼び出しで行われているため、朝から晩まで職員から聴取されるケース(実地調査)の方が珍しいです。
無申告の人への税務調査はより厳しくなっている
毎年申告書を作成し適正に納税している人からすると、税金を意図的に支払っていない人がそのまま放置されていたら、税金を納めるのが馬鹿らしくなりますよね。
そのため、国税組織は近年、無申告の人に対しての取り締まりを強化しています。
また、無申告者の取り締まりで活躍するのがマイナンバー制度です。
10万円給付金でも話題になりましたが、さまざまなものにマイナンバーが連動すれば、税務署は脱税の実態を把握しやすくなります。

金額に関係なく脱税をするメリットはない
脱税しても実際に捕まっていない人や、そのまま税金を逃れている人は存在しますが、その方々はまだ税務署に見つかっていないだけで、翌日には税務調査が行われているかもしれません。
また、税務署に見つからない脱税方法は存在しませんし、もし存在するとしても表に情報が出た時点で税務署に見つかる脱税方法です。
税務署は脱税の尻尾を発見さえすれば、強力な権限を行使し、銀行口座などをくまなく調べることが可能だからです。
私自身、税務署職員時代も今現在も「税金は高い」と思うことはあります。
しかし、脱税すると余計な税金を追加で支払うことになりますので、節税の範囲内で税金を抑える方法を考えましょう。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)