マイホームの購入は多くの人にとって人生の大きな目標の1つですが、そのための経済的負担は極めて大きなものです。
女手ひとつで小さな子どもを育てているシングルマザーが、住宅ローンを組み、マイホームを持つことは難しいのでしょうか。
今回はFPに寄せられた相談をもとに、シングルマザーのマイホーム購入について解説したいと思います。

目次
シングルマザーの相談者の悩み
今回の相談者は、小学生のお子様がいらっしゃる30代のシングルマザーで、幸い2年ほど前に正社員として登用され、年間の収入は350万円ほどありました。
現在は賃貸マンションに親子で居住していますが、騒音問題もあり兼ねてからの希望であった一軒家の購入を希望されています。
しかし、
・ 住宅ローンが利用できるのか
など、不安な点が多いとのことでした。

融資可能額=返済可能額ではない
住宅ローンを組むにあたって、
・ 1つの事業所での勤続年数3年以上
・ 年収400万円以下の場合、返済比率は30%以下
といった項目が重要です。
今回の場合ですと、勤続年数を満たせば住宅ローンを利用できる可能性は高いのですが、融資額が問題となってきます。
仮に
・ 金利1%の35年間元利均等返済
で住宅ローンを利用した場合、融資可能額は3,100万円で、返済額は月々8万7,500円にもなります。
夢の実現に張り切るあまり、過剰な経済的負担を負ってしまうと、後年の資金計画に悪影響を及ぼしてしまうほか、
・ 管理費
・ 固定資産税
といった新たな支出項目も生じるため、返済比率は20%程度に抑えることをおすすめします。
住宅ローンは健康なうちに
住宅ローンは返済期間が長期間にわたるため、団体信用生命保険(団信)への加入が求められることが多くあります。
年齢を重ねていくうちに
病気などを患ってしまうと団信が利用できなくなったり、
金利上乗せが大きい基準緩和型の団信を利用せざるを得なくなってしまうため、住宅ローンを利用する意向がある場合は
健康へ配慮し、早めの行動に移ることにしたほうがいいでしょう。

子どもに遺す資産として
シングルマザーの方がマイホームを所有する際は、いざとなれば2馬力で収入を得ることができる2人親世帯よりも収入を得る力が小さいため、よりシビアに返済計画を検討する必要があります。
また万が一の際は、マイホームは子どもへの相続資産になる面も意識する必要があります。
お子様が未成年や障がいなどで、後見人が付く場合は、マイホームの売却には家庭裁判所の許可が必要になるなど、財産の処分に一定の制限がつきます。
相続発生後、お子様が介護施設への入所や親せきとの同居などで空き家状態になっている場合でも、マイホームの売却が行えず、維持費用だけが生じ続けるといったことにもなりかねませんので注意しましょう。(執筆者:菊原 浩司)